【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は17日、韓国との経済協力事業が中断している西部の開城(ケソン)工業団地と東部の金剛山(クムガンサン)観光地区に部隊を展開する方針を明らかにした。韓国の脱北者による金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を非難するビラの散布に対する報復措置の一環。報道官発表として朝鮮中央通信が伝えた。
南北軍事合意で非武装地帯(DMZ)から一部撤去した監視所の復活のほか、黄海側の砲兵部隊など前線の警戒態勢を引き上げ、軍事境界線付近で軍事訓練を再開する方針も示した。
同通信によると、正恩氏の妹、金与正(ヨジョン)党第1副部長は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領からの特使派遣提案を拒否。与正氏は17日の談話で、南北対話や協力を強調した文氏の発言に嫌悪感を表した。
北朝鮮側は、韓国の態度や行動で「連続的な敵対行動措置の強度と決行時期を決める」とさらなる報復を警告。韓国国防省は17日、「実際に行動に移せば、北は必ず代償を支払う」と応じており、南北の軍事的緊張が高まりつつある。
北朝鮮メディアは17日、開城の南北共同連絡事務所を16日に爆破した映像を公開。メディアはさらに「ソウルを火の海に」という過去の脅し文句を取り上げ、「それより凄惨(せいさん)な脅威があり得る」と主張した。
北朝鮮が25日の朝鮮戦争勃発70年の節目に向け、一層緊張をあおり、国内引き締めに利用する可能性がある。韓国の金錬鉄(ヨンチョル)統一相は17日、事態悪化の責任を取るとして辞意を表明した。