和歌山県の高野山(高野町)につながる世界遺産で国史跡の参詣道「町石道(ちょういしみち)」で、同県かつらぎ町内の一部が無断掘削されていることが分かり、町は18日、文化財保護法違反容疑で、県北部在住の80代男性を県警かつらぎ署に刑事告発したと発表した。町は今後、県教委や文化庁とも協議し、現場を復旧する方針。
町石道は、同県九度山町から高野山に続く参詣道で、一部かつらぎ町を通る。1町(約109メートル)ごとに「町石」と呼ばれる石塔が設置されたとされる。
町教委によると、5月21日、町石道の通行者から「一部が毀損(きそん)されている」と町に通報があり、職員らが現場を調査。約2キロの範囲にわたり計12カ所で無断掘削が確認された。
幅約2メートルの町石道を横切るように掘削して溝にしていたり、付近に大きな石を敷き詰めたり、倒木を埋めたりしていた。スコップで掘られたような跡も確認された。ただ、現状でも通行には支障ないという。
調査を進めた結果、目撃情報などから80代男性の掘削の可能性が浮上。男性に聞き取り調査もしたが、町教委は「本人に聞いても不明なことが多く、今後の捜査に任せることにした」と説明している。
今後、現場を復旧する方針だが、山奥にあるため重機の使用が難しく、人力で進めることになり、完全復旧の時期は未定という。
町内の町石道は月1回、職員らがパトロールや清掃などをしており、新型コロナウイルスの影響で中断した時期を除くと、直近では3月26日にパトロールしていた。その際は異常がなかったという。
町教委の池田八主雄(やすお)教育長は「世界遺産で国の史跡でもある町石道が毀損されたことは誠に遺憾。今後、関係機関と協議を行い、早急に現状復旧に取り組みます」と話した。