鉄鋼などの素材産業の生産が落ち込んでいる。日本鉄鋼連盟(鉄連)が22日に発表した5月の粗鋼生産量は、前年同月比31・8%減の591万6千トンと、3カ月連続で前年を下回った。また日本製紙連合会(製紙連)が同日発表した5月の紙・板紙の国内出荷量は、昭和63年に統計を取り始めて以降で過去最低。新型コロナウイルスの影響で自動車などの生産が減り、個人消費も低迷する中、厳しい経営環境が続く。
鉄連によると、31・8%の減少率はリーマン・ショック後の平成21年6月(33・6%減)以来の大きさ。4月の24・0%減からさらに悪化した。1日当たりの生産量も19万1千トンと4月の21万9千トンを下回った。
鉄鋼業界は自動車産業などからの需要減を受けて、再稼働できる状態で高炉を止める「バンキング」を行っている。鉄連は「鋼材需要を牽引(けんいん)する業種が依然として見当たらない」と説明し、回復時期は「見通せない」としている。
一方、5月の紙・板紙の国内出荷量も、10カ月連続のマイナスとなる前年同月比19・0%減の156万トンと低迷。これまで最低だった今年1月(175万7千トン)を大幅に下回った。減少率は4月の9・4%を大きく超え、21年2月(20・7%)に次ぐ悪さだった。
背景にあるのは国内の経済活動の縮小だ。5月はチラシなどに使う塗工紙の40・5%減をはじめ、すべての品種の出荷が減少。4月に唯一プラスだったトイレットペーパーなどの衛生用紙も、7・9%減と4カ月ぶりにマイナスへ転じた。
製紙連の野沢徹会長(日本製紙社長)は22日の会見で「5月から6月にかけてがボトム(底)になる」と予測する一方、国内での景気を下支えしてきたインバウンド(訪日外国人)の回復には「3、4年かかる」とした。
また石油化学工業協会(石化協)によると、石油化学製品の基礎原料として経済活動の強さを反映するエチレンの生産量も5月に前年同月比12・6%減と低迷。前月比でも5・8%減となっている。(井田通人)