理化学研究所と富士通は22日、共同開発した新型スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」(神戸市)がスパコンの計算速度の世界ランキング「TOP500」で1位になったと発表した。日本勢がトップに立つのは約9年ぶりの快挙で、技術力の高さを再び世界に示した形だ。
スパコンは半導体など多くの先端技術が開発に必要で、自然科学や産業分野で研究開発の原動力となる。その国の科学技術の水準を示す象徴的な存在だ。
世界ランクは国際会議で約半年ごとに発表。日本は富岳の前身で、昨年廃止された「京(けい)」が2011年6月と同11月に連覇したが、その後は米国や中国に首位の座を奪われていた。
富岳の計算速度は1秒間に41京5530兆回(京は1兆の1万倍)で、前回首位だった2位の米オークリッジ国立研究所の「サミット」に約2・8倍の大差をつけた。中国勢は約8年ぶりに4位以下に後退した。
富岳は来年度の本格稼働を目指しており、今回の計算速度は完成時の8割程度。より実用的な計算や人工知能(AI)、大規模データの計算性能を競う分野でも首位となり、世界初の4冠を達成した。
理研は「全ての主要な性能で突出して世界最高を示せた。富岳の技術が世界をリードする形で広く普及するだろう」としている。
ただ、米国や中国は1秒間に100京回の計算速度を持つスパコンを来年にも完成させるとみられており、開発競争は今後も熾烈(しれつ)さを増しそうだ。
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■富岳 理化学研究所の計算科学研究センター(神戸市)に設置されたスーパーコンピューター。先月中旬に搬入が完了した。スパコン「京」の後継機で、約100倍の計算性能を持つ。政府による開発費は1100億円。シミュレーション(模擬実験)や人工知能(AI)の研究開発で使う計算に向いており、防災や創薬など幅広い分野で活用を目指す。
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主なスパコンの順位と計算速度(1秒当たりの計算回数)は以下の通り(※は初めてランキングに登場した機種)。
(1)理化学研究所「富岳」 41京5530兆回 ※
(2)米国・オークリッジ国立研究所「サミット」 14京8600兆回
(3)米国・ローレンスリバモア国立研究所「シエラ」 9京4640兆回
(4)中国・無錫スパコンセンター「神威太湖之光」 9京3014兆回
(5)中国・広州スパコンセンター「天河2A」 6京1444兆回
(6)イタリア・エネルギー大手エニ「HPC5」 3京5450兆回 ※
(7)米国・半導体大手エヌビディア「セレネ」 2京7580兆回 ※
(8)米国・テキサス大「フロンテラ」 2京3516兆回
(9)イタリア・大学と研究機関の共同体シニカ「マルコーニ-100」 2京1640兆回 ※
(10)スイス・国立スパコンセンター「ピッツ・ダイント」 2京1230兆回
(12)産業技術総合研究所「AI橋渡しクラウド(ABCI)」 1京9880兆回
(19)東京大・筑波大「オークフォレスト・パックス」 1京3554兆回