JR東海は3日、リニア中央新幹線計画の静岡工区での準備工事着工が遅れている問題に関し、目指してきた令和9(2027)年の品川-名古屋間の開業を延期することを事実上表明した。大井川の流量減少などへの懸念から着工に反対してきた静岡県が同日、JR東海に対して着工を認めない意向を正式に伝えたことを受けて判断した。
JR東海は3日のコメントで「残念ながら2027年の開業は難しいという認識である」と言及した。今後の対処については「現時点で決めていない」とし、工事実施計画の認可を出した国土交通省との協議を進めるという。一方、静岡県の判断について「納得できない」とし、改めて意向を確認するともしている。
開業が遅れることで、主要駅周辺や沿線の自治体などでの開発計画への影響は不可避だ。災害で東海道新幹線などが被災した場合に備える主要都市圏をつなぐ交通網としての役割も実現が遅れるおそれがある。
政府高官は3日夜、リニアについて「手を替え品を替えやっていく。一緒になってやっていく」と述べ、政府としてJR東海を側面支援する考えを示した。
JR東海は静岡工区について6月中に各ヤード(作業基地)での準備工事に着手できるよう求めてきたが、静岡県は3日にJR東海に提出した正式回答で「ヤード整備はトンネル掘削工事の一部」とし、着工には県との協定締結が必要だと指摘。そのうえで「現時点では県としては協定を締結する状態に至っていないと判断している」と記し、準備工事は認められないと結論付けた。
川勝平太知事は6月26日のJR東海の金子慎社長との会談で着工の可否について明言を避ける一方、会談後、記者団に「本体工事に関わるものだから一切認められない」としていた。