コロナ禍による公演の中止などで、表現する場を失った演奏家らを応援しようと、人間国宝(長唄三味線)で邦楽作曲家の今藤政太郎(いまふじ・まさたろう)(84)が「いまだから!邦楽コンサート」を企画。その第1回が10日、東京の渋谷区文化総合センター大和田で開かれる。
今藤は、企画の趣旨を「可能な形で芸術活動を再開することが、芸術・芸能関係者自身はもとより文化そのものを守るために必要不可欠」と話す。“人間国宝”自らが上演に向け、企画から会場の確保、宣伝活動に奔走した。
今回は「祈り二題」として、福原徹作曲「キリエ」の生演奏と、今藤が若手3人と作曲した折口信夫原作「死者の書」をビデオコンサート(平成29年収録)の形で披露する。
感染予防のため3分の1程度に席数を減らし上演される。チケット(2千円)はほぼ完売。収益は、出演者やスタッフら約40人に等分される。
現在、邦楽演奏家の多くが無収入という。今藤は「たとえ少額でも収益の一部を手にすることで、自分の価値を認めてもらえたと感じられる。プロとしてのモチベーションを保つためには重要」と断言する。
そして、今藤は「コロナ禍により、表現する場がないことのつらさ、また芸術活動をその場にいて享受できないことのつらさが、これほどまでとは思っていなかった。改めて、人が生きていく上での芸術の重要性を感じている」としみじみ語った。(水沼啓子)