【ニューヨーク=上塚真由】米ニューヨークの一等地、五番街で9日、トランプ大統領の住居が入る「トランプタワー」前の路面に、黒人差別解消を訴える運動のスローガン「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」の巨大文字が塗装された。計画は、トランプ氏を敵視するデブラシオ市長(民主党)が推進してきた。
地元の人権団体のメンバーが9日朝から作業を開始し、トランプタワーのほか、隣接する米宝飾品大手ティファニー本店前の路面に黄色い文字を描いた。デブラシオ氏も現場で文字の一部を塗装。「米国では黒人の命は大切だ。トランプ氏が理解していないことを(描いて)彼に見せよう」と語ると、支持者の拍手や、計画に反対する人の怒号などが入り交じった。
運動のスローガンは米各地で描かれているが、おひざ元での計画にトランプ氏は猛反発し、7月1日には「美しい通りを侮辱するものだ」とツイートした。また、人種差別に抗議するデモの参加者が警察を軽蔑するような言葉を連呼していると主張し、運動を「憎悪の象徴」と非難した。
トランプ氏の主張には「人種差別問題を全く理解していない」(ニューヨーク在住の21歳男性)と批判が強まる一方、地元ではデブラシオ氏にも風当たりが強い。五番街の近くで働く女性(43)は「五番街に政治的メッセージはいらない。本来の黒人差別解消ではなく、米国の分断の深さを世界に伝えるだけだ」と困惑した様子で語った。
米国で最も新型コロナウイルス感染の被害が深刻となったニューヨーク市は90億ドル(9600億円)の財政赤字が見込まれ、連邦政府からの財政支援がなければ、今秋に2万2000人の市職員を解雇する必要があるという。保守系のニューヨーク・ポストは、トランプ氏を挑発するばかりのデブラシオ氏を「アマチュアの政治家だ」と指摘している。