中国版ナスダックと呼ばれる上海証券取引所の新興企業向け株式市場「科創板(かそうばん)」が、22日に取引開始から1年を迎える。政府主導で育成を進めるハイテク企業を支えるため、習近平国家主席の肝煎りで開設された国策市場だ。16日に中国政府が重要視する半導体企業が上場するなど、1年間で上場企業数は100社超増えた。米中対立がハイテク分野に広がって激化する中、その存在感が増している。(北京 三塚聖平)
「上場後、国内資本市場の力をさらに借りて、イノベーション(技術革新)と発展を加速させる」
ネットメディア・澎湃(ほうはい)新聞によると、16日に科創板上場を果たした中芯国際集成電路製造(SMIC)の周子学会長は上場式典でこう強調した。
同社は、半導体受託製造で中国最大手だ。米中貿易戦争で注目された中国の産業育成策「中国製造2025」で半導体の国産化推進を掲げたが、SMICはその戦略を支える重要企業のひとつだ。そのため市場は過熱し、初日の取引は公開価格の3倍超で終了。調達額は460億元(約7千億円)を上回るといい、香港紙の明報(電子版)は「科創板が再び市場の注目を受けた」と指摘した。
科創板の創設は、習氏が2018年11月の「中国国際輸入博覧会」で表明した。当時は貿易戦争の最中で、国内ハイテク産業の育成を支援する「国策市場」だと市場関係者は受け止めた。その後、19年7月22日に25銘柄で開始。当初は取引が過熱したが、昨年秋頃には売買代金が減少するなど熱気が冷め、市場の将来性を懸念する声も出た。
同市場が再び存在感を高めるようになったのは、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)後に米中対立が再び激化したためだ。米国では、華為技術(ファーウェイ)など中国ハイテク企業を排除する動きがあり、金融市場でも中国企業を念頭に置いた規制強化が進む。明報は「中米ハイテク戦争が科創板の二度目の春をもたらした」との見方を示す。
科創板に上場したSMICは昨年に米国上場を廃止していた。米上場の中国企業が香港証券取引所へ相次いで重複上場しているが、中国本土市場への上場も進むとみられる。科創板の上場企業数は今月17日までに130社となっているが、中国自動車大手の吉利汽車など上場予備軍が並ぶ。国を後ろ盾に中国企業を集めていくものとみられる。