【北京=西見由章】中国の習近平指導部が外交的に孤立を深めている。習指導部の発足後、低姿勢に徹する●(=登におおざと)小平の外交路線「韜光養晦(とうこうようかい)」を捨て、自国の意志を貫く「大国外交」に転換したことが根本的な要因だが、新型コロナウイルスの感染拡大以降は習外交の独善性と内向き志向に拍車がかかっている。
「われわれは超大規模市場という優位性を発揮し、国内の大循環を主体とする新たな発展の構造を形成しなければならない」
習国家主席は21日、国内企業家との座談会でこう語った。世界経済を取り巻く環境が厳しさを増す中、国内経済さえ復活させれば諸外国はおのずと中国になびくとの思惑がにじむ。
中国は新型コロナの発生源として米欧はじめ各国から厳しい視線を向けられているが、積極的に関係改善に動くよりも、コロナによる混乱を奇貨として自国利益を露骨に優先させようとする姿勢が目立つ。
海洋進出をめぐっては南シナ海で4月、中国公船がベトナム漁船に体当たりして沈没させる事件が発生。スプラトリー(中国名・南沙)諸島などに新行政区も設置し、ベトナムはじめ領有権を争う東南アジア諸国は警戒感を高めている。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺でも中国公船が100日連続で出没するなど日本への挑戦は新たな段階に入った。インドとの国境では両軍に死傷者が出る大規模衝突が発生した。
中国当局の強硬外交を後押ししているのは愛国主義的な国内世論だが、一枚岩ではない。北京の外交筋は「一般国民の間でも中国自らが四方八方に敵を作り出しているという認識が広がっている」と分析し、「特に輸出型企業の関係者は、好戦的な態度が目立つ中国外務省に大きな不満を抱いている」と指摘する。
中国当局自身も焦りを感じ始めたようだ。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は27日付社説で、トランプ政権による米ヒューストンの中国総領事館閉鎖は予想外だったとの認識を示し、「21世紀の冷戦は、20世紀よりも爆発性を備えているようだ」と危機感をあらわにした。