ALS患者の女性から依頼を受け、薬物を投与して女性を殺害したとして医師2人が京都府警に逮捕された事件で、ケアチームの一員として女性を7年間支援してきた男性が産経新聞の取材に応じ、女性について「生きることに前向きで、努力を惜しまない人だった」と振り返った。
ケアチームは主治医やヘルパー、看護師、理学療法士ら約30人で構成。24時間体制で食事や入浴、たんの吸引など、全面的な生活支援を担っていた。
芸術に造詣が深かった女性のために、自宅にビオラ奏者を呼んでコンサートを開くと、感動の涙を流したという。男性は「それ以外で、涙を流す姿は見たことがない」と振り返る。動物が大好きな女性に、別の支援員がイヌやネコを連れてきたこともあったという。
女性は治療に対して投げやりな態度などはなく、ALSの治療法を自ら調べて主治医に相談したこともあった。事件が起きたのは昨年11月30日だが、前日にも治療について話し合ったばかりだったという。
一方で女性は事件前、安楽死を望み主治医に相談したが、断られていた。男性も別の支援者から、女性がSNSで安楽死についての情報を集めていることは聞いていたといい、チームで女性の心理的ケアについて話し合おうとしていたところだったという。
女性の死について、「誰かにそそのかされたり、突発的な心の揺れだったりではないと思う。つらい」。「24時間体制でケアしているなか、あんな事件が起こるとは思わなかった」と悔やみ、こう話した。
「『難病患者はかわいそうな状況に置かれているから、安楽死を選ぶ』というのは偏見だ。女性が生きる選択をするために何が必要だったか、社会の認識も変わらなければならない」