「山口組ハロウィーン」禁止条例が引いた正邪の境界線

[ad_1]

「山口組ハロウィーン」禁止条例が引いた正邪の境界線

 対立団体との抗争が絶えない国内最大勢力の特定抗争指定暴力団山口組。そんな血なまぐさい組のイメージとは何ともちぐはぐな“地域行事”が存在する。それがこの時期の定番となったハロウィーンと、年末年始の餅つき大会だ。特に子供にお菓子を配るハロウィーンは近年、約1千人を集めるなど当局も看過できない規模に発展。兵庫県警は10月県議会で、これを禁止する暴力団排除条例改正案を成立させた。全国初となった条例改正の背景には、反社会的勢力への入り口が曖昧化しつつあることへの危機感があった。

【表でみる】暴力団排除条例改正の主なポイント

■“地域貢献”の装いのもと…

 高級住宅街としても知られる神戸市灘区に総本部を置く山口組。毎年ハロウィーンの時期になると、仮装した子供が本部を訪れ、組員からお菓子をもらう光景がおなじみとなっていた。年末年始の餅つき大会もそう。組員の手による、つきたての餅が参加者に振る舞われるのだ。近隣の70代の男性は「少し離れた地域から小さな子供を連れて来る人が多かったようだ」と話す。

 近年、日本でもすっかり市民権を得た感のあるハロウィーン。山口組によるこのイベントの開催を、県警が初めて確認したのは平成25年のことだ。

 山口組が分裂した27年と、県公安委員会により事務所の使用制限がかかった昨年は中止となったが、参加者は増加傾向にあり、最後に行われた30年には約1千人が本部を訪れる一大行事に成長していた。

 「イベントは地域住民を手なずける懐柔策に他ならない」と眉をひそめるのはある県警幹部。住民から事務所の立ち退きを求める訴訟を起こされたり、暴力団追放運動を大々的に展開されたりすれば、組側にとっては大きなデメリットになる。お菓子や餅の配布は、こうした暴排運動の心理的契機を摘み、または歯止めをかける最初の布石となる。

■未成年との接点

 こうした問題意識はもちろん当初からあったが、ここに来て県警がハロウィーン断固阻止にかじを切ったのは、昨年11月のある事件がきっかけだった。

 同県加古川市の農道で車が放火された事件では、行方不明になっていた所有者の男性が、京都府内の山中で遺体で発見された。男性は神戸山口組系組幹部との金銭トラブルの末に殺害されたが、この事件に関与して逮捕された12人のうち実に9人が少年だったのだ。

 捜査関係者によると、少年らは組幹部から食事をおごってもらうなど日頃から親しい関係にあったというが、車両放火から殺人、死体遺棄に至る各過程に、組員でもない未成年がそれぞれ関わっていたことは、少なからぬ衝撃だった。

 暴力団の有力な資金源となっている特殊詐欺でも、アルバイト感覚でその片棒を担ぐ少年が後を絶たない。昨年11月の事件は対立組織側が起こしたものとはいえ、危機感を強めた県警は、暴力団と青少年との接触の機会を徹底的に絶つ必要があると判断。暴力団組員が18歳未満の青少年に金品を配ったり、青少年を組事務所に立ち入らせたりすることを禁止する暴排条例改正案を提案し、今月5日の県議会で成立させた。

■「憧れにはさせない」

 今回の改正条例にはもう一つポイントがある。《青少年の育成に携わる者は、青少年が暴力団に対する正しい理解の下に行動することができるよう、助言や指導を講ずるよう努める》との文言が、新たに付け加えられたことだ。

 「これまでは特定の場所を名指しして、児童たちに『行くな』とは言いにくかった」。神戸市内のある小学校校長はこう明かし、今回の改正を歓迎した。暴力団関係者と縁故のある子供たちへの配慮もあり、指導も限定的なものにとどまっていたというが、今回、法的な後ろ盾ができたことで「暴力団の脅威や事務所の場所など、より具体的に注意喚起できる」と期待感をにじませた。

 住民の多くは条例改正を評価するが、山口組ハロウィーンを「慈善活動」と肯定的にとらえる人もゼロではない。ある80代の男性は条例改正には賛成するものの「阪神大震災のときに山口組が物資を調達してくれて助かったこともある」と話す。

 近年、暴力団と接点を持ちながら暴力団対策法の網にかからない半グレ集団の暗躍も問題となっている。県警幹部は「若者をいかに半グレの道に進ませないかが課題だ。子供が暴力団に憧れるようなことはあってはならない」と改正条例を武器に取り締まりを一層強化していく姿勢を示した。

[ad_2]

Source link