サムスン電子の米国テキサス州オースティン半導体工場。[写真 サムスン電子]
半導体サプライチェーンを自国中心に変えるための米中覇権競争がヒートアップし、韓国半導体企業がこの間に挟まれて身動きが取れなくなるという懸念が出ている。特に米国ホワイトハウスからの招待状を受けたサムスン電子の悩みが深まっている。
7日(現地時間)、米国CNNなどによると、ジョー・バイデン大統領は半導体チップ不足事態に関連した法案がまもなく発議されると明らかにした。これに先立って2日、米国ブルームバーグ通信はホワイトハウスが12日の大統領補佐官主宰の会議にGMやグローバルファウンドリーズなどと共にサムスン電子を招待したと報じた。
3日には中国の王毅外交部長が鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官と会い、半導体を含む先端技術分野で協力を要請した。中国は「半導体自立」を宣言した状態だ。半導体覇権を狙う二つの強大国が先を争ってサムスン電子に「請求書」を押し付けている局面だ。
12日のホワイトハウス会議は、表面的には世界的な半導体不足に対して対策を協議するということだが、業界では米国内ファウンドリ(半導体委託生産)投資にスピードを出してほしいという注文だと解釈している。従来のテキサス州オースティン工場やアリゾナ州・ニューヨーク州などへの追加投資を天秤にかけているサムスン電子に対する米国政府の圧迫がさらに強まったといえる。
米国は半導体需給を「安保イシュー」と認識している。ドナルド・トランプ前大統領に続いてバイデン大統領も半導体サプライチェーンの海外依存度を低めるために積極的に動いている。国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が6日、米国商務省に提出した報告書によると、米国のグローバル集積回路(IC)市場占有率は2000年24%で世界2位だったが昨年は12%(5位)に落ちた。代わりに台湾・韓国・中国などアジア3カ国が全世界流通量の61%を占めている。
SEMIは報告書を通じて「半導体グローバル・サプライチェーンで米国の立場が狭まっている」と診断して「米国は国家および経済安保を支えるために半導体サプライチェーンで生産能力を育てなければならない」と強調した。サムスン電子に対して米国が直接揺さぶりをかける可能性があるという見方もある。匿名を求めたソウルのある私立大学教授は「米国がサムスン電子の中国内半導体事業にブレーキをかける可能性もある」と話した。
サムスン電子としては米国の要求を無条件に受け入れることも難しい境遇だ。現在、中国は韓国半導体輸出額の4割を占める1位貿易国だ。関税庁によると、先月半導体輸出額85億6000万ドル(約9350億円)のうち中国の比率は38.3%だった。サムスン電子は中国の上海・西安・蘇州などに半導体とディスプレイの生産施設や販売法人などを置いている。西安にはNAND型フラッシュメモリ生産工場を運営中で、西安第2工場は150億ドルを投じて第2段階までの増設投資が完了した状態だ。
米中両国が政府次元でサムスン電子に協力と圧迫を加える状況に対し、専門家は韓国政府の適切な外交的仲裁と支援が必要だと指摘する。高麗(コリョ)大学情報保護大学院のキム・スンジュ教授は「米国と中国は政府が出ているが、サムスン電子は民間企業次元で対応していて韓国政府が抜けている状況」としながら「政府が外交的解決法を通じて難しい立場に処した企業を支援して複雑な路線を調整する必要がある」と話した。