兄弟がよく訪れていた自宅近くの公園(大阪市西淀川区で)
大阪市西淀川区の民家で昨年4月、50歳代の兄弟2人が遺体で見つかった。弟(当時56歳)には重度の知的障害があり、兄(同57歳)が一人で介護をしていた。大阪府警西淀川署は14日、介護疲れから無理心中を図ったとして、兄を容疑者死亡のまま殺人容疑で書類送検した。事件が起きたのは兄からのSOSで本格的な支援が始まる矢先だった。悲劇は防げなかったのか。(吉田清均)
布団に並んで
「弟の命をたちました。これから弟の後をおいます」。木造2階建て住宅の2階和室の机上に残された便箋大の紙には、将来を悲観する言葉とともに、こうつづられていた。府警は兄が書いたとみており、同じ部屋に敷かれた布団の上では、2人が並んで死亡していた。
兄は透明のポリ袋を頭にかぶり、弟の顔にはタオルがかけられていた。司法解剖の結果、死因は2人とも窒息死だった。
昨年4月24日夜、兄と連絡が取れないことを不審に思った区の相談支援センターの職員が110番して見つかった。職員は4日前に家を訪れ、兄から「入浴介助のサービスを利用したい」と弟の介護について相談を受けていた。同22日に事業者が決まったと電話を入れたが、つながらなかった。2人は同日正午までに死亡していたとみられる。
2人で散歩
西淀川区役所や近隣住民によると、2人の両親は、兄弟が幼い頃からこの家で小さな薬局を営んでいた。父親が1998年に他界して間もなく、離れて暮らしていた兄が実家に戻り、母親と兄弟の3人暮らしを始めた。
弟は6歳の頃、失語症で障害者手帳を取得し、重い知的障害もあった。家にこもりがちで、夜遅くまでテレビを見るなど、昼夜逆転の生活をしていたという。
母親が7年以上前に死去してからは、兄は介護で就労が困難だとして生活保護を受給しながら一人で弟の面倒を見ていた。近所では、兄が弟を連れて散歩する姿がよく目撃されていた。
「自分が面倒見る」
一家は長らく介護への行政の支援を受けることはなかったが、弟の特性が影響していたとみられる。