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新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」による急速な感染拡大で、原則10日間の待機が求められる濃厚接触者の数が急増している。保育園などの休園も増え、自身が濃厚接触者ではなくても仕事を休まざるを得ない保護者も多い。いまだ天井が見えない感染「第6波」を前に社会機能の維持が困難になる懸念が強まっており、政府は対応を迫られている。
【画像】新型コロナの感染状況
1月中旬、感染者が出た九州北部の保育園では、保健所の調査で全園児ら約100人が濃厚接触者と認定された。子どもが10日間の待機を求められたことで出勤できない保護者が続出。息子を通わせる30代の会社員男性は「今は妻が仕事を休んで対応しているが、10日はさすがに無理。繁忙期なので自分が休めるかどうか…」と不安を口にした。
今年に入り、全面休園する保育園や認定こども園は急激に増えた。厚生労働省によると6日時点の7カ所から1週間で86カ所に増加、20日時点では過去最多だった昨年9月の185カ所を超える見通しという。約2週間で休園する施設が26倍超に増えたことになる。
国立感染症研究所が一昨年の富山県の事例を基にした分析では、1人の感染につき濃厚接触者は、4・3人いたという。1日5万人ペースで感染者が出続けた場合、単純計算で濃厚接触者は1週間で150万人に上る。子どもの世話のため仕事を休む保護者のケースも含めれば、各施設や企業で人手不足が深刻化する恐れがある。
政府は14日、潜伏期間が短いなどのオミクロン株の特性を踏まえ、14日間だった待機期間を原則10日間に短縮した。専門家の助言を踏まえて厚労省が「原則7日間」を軸に検討する中、岸田文雄首相が「慎重だった」(政権幹部)ことから現在の措置になった。
東京都の22日の新規感染者数は1万1千人を上回り、来週には1万8千人超との推計もある。感染者の爆発的増加を受け、社会機能を維持するために濃厚接触者などの待機期間を10日間からさらに短縮した欧米のように、日本も早晩、対応が必要となる。
既に東京や大阪府の保健所では濃厚接触者の調査や認定が困難になり、感染抑止のための手当てが追い付いていない。21日の参院本会議で待機期間の短縮について問われた首相は「社会活動維持のために科学的知見の集約を急ぎ、オミクロン株の特性を踏まえためりはりのある対応を検討していきたい」と前向きな考えを示した。
(久知邦)