
フジテレビ(faula / PIXTA)
ここのところ男性アナウンサーの退職が相次いでいる。テレビ朝日の富川悠太アナ、日本テレビの桝太一アナ、フジテレビの福原直英アナなど、各局の看板男性アナが次々と局アナを辞める決断をしている。
【画像】2018年にフリーになった元フジ・田中大貴アナ
「女性アナには年齢という“ガラスの天井”が存在しているから早めにフリーになるケースが多いが、男性アナはじっくり専門分野で実力をつけて局内で出世コースを狙うケースが多い」というのが、かつて業界内でよく言われた構図であった。
しかし、いまや看板男性アナも積極的に退職を選ぶ時代になりつつある。その背景には何があるのか?
簡単に言えば「男性アナ不遇の時代」が到来しており、ベテラン男性アナも退職を選びたくなるような状況になっているということができると思う。その理由を4つに分けて説明していこう。(テレビプロデューサー・鎮目博道)
●激減する「スポーツ実況」
理由(1):番組の変質により「これまで培ってきた実力」が求められなくなった
まず最も大きいと思われるのが、「テレビ番組の変質」という要因だ。
ここのところテレビ番組が大きく変革を求められている中で、男性アナのいわば「生命線」でもある「長年かけて培ってきたアナウンサーとしての実力」があまり求められない状況になってきてしまっているのだ。
この変化は主に男性アナの「主戦場」とされるスポーツ番組とニュース番組で起きている。
まずスポーツ番組。かつては「野球」「プロレス」などの中継番組がテレビの花形とされ、その実況を担当するアナウンサーはまさに「男性アナたちの憧れの的」であった。
ゴールデンタイムの看板番組は巨人戦。その視聴率は文句なく同時間帯のトップを飾るキラーコンテンツという時代が長く続いた。
「スポーツ担当アナ」たちは野球やプロレスなどの実況の腕を磨き、熱心に勉強した。実はスポーツの実況をするには血の滲むような超人的な努力が必要だ。
オリンピックを見ていてお感じになった方も多いと思うが、スポーツアナたちは瞬時に間違えることなく選手たちの「技」などを見抜き、アナウンスしなければならない。
さらに、それぞれの選手の特徴や、これまでの選手としての経歴などを把握して、その情報も実況に入れつつ、解説者に適切なタイミングで的確な質問もしなければならない。
これをきちんとできるようになるには驚くほどの準備・勉強と実務経験の積み重ねが必要だ。
しかし、今や地上波テレビにはスポーツ番組はほとんどなくなってしまった。ゴールデンタイムでの野球中継はほぼ皆無。それ以外のスポーツ中継も、そのほとんどが「DAZN」などのスポーツ専門の有料配信に移行してしまった。
せっかく長年にわたって磨いた「実況の腕」も、肝心の放送枠がなければ発揮する機会はないのだ。
●ニュースの出演機会も減る
そしてニュースの世界でも同じような事態が起きている。
かつて報道担当の男性アナたちは「事件現場からのレポート」や「スタジオでの正確なニュース読みとMC」を担う主役であった。当然のことながらレポートやニュース読み、MCができるようになるにはスポーツ実況と同じような長期間の勉強と実務経験が必要となる「職人の領域」だ。
しかし、ここのところニュース番組でも男性アナたちの活躍できる領域が狭くなるような変革の波がいくつか起きている。
まずは、現場からのレポートが非常に少なくなった。コロナ禍の影響や予算削減が主な要因だ。お金がかかり多人数のスタッフが移動しなければならない「現地からのアナウンサーの取材レポート」から、費用も安く感染機会も減る「スタジオでのボードを使った解説とトーク」中心へとテレビニュースの主流が移行してきている。
こうなれば「現場百回」のベテラン報道アナは必要ない。ボードを使ったスタジオの解説なら、女性アナや若い男性アナがやったほうがテンポ感やスタジオの出演者のバランス上も良いと演出側は考えてしまう。
さらに、何かニュースが発生した時の「現場からの生中継」も、わざわざ東京からアナウンサーを送り込むのではなく、現場にいる担当記者がおこなうケースが増えている。記者たちも近年は中継の教育などをちゃんと受けているから、そのほうが安いし十分なのだ。
さらに、最近ではニュース番組のMCも、ジェンダー平等などの観点から 女性が増えてきた。女性タレントや女性アナがメインのニュース番組が非常に 多い。
しかもここのところ、アナウンサーではなく記者経験のあるジャーナリストが担うことも増えてきた。欧米でいう「キャスター」とか「アンカーマン」のイメージに近いものが求められるようになってきたということだろう。
自らもニュース取材の経験を持ち、それを元にニュースを分析・解説したり自分の意見を表明できる「記者出身者」のほうがアナウンサーよりも良い、という考え方が次第に定着してきている。
こうして、報道畑の長いベテラン男性アナウンサーたちは、次第にその活躍の場が少なくなってきているのだ。