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“西朝鮮”という国をご存じだろうか?・・・もちろんそんな国家があるわけではなく、さながら北朝鮮のような独裁体制を築く中国を揶揄したいわゆるネットスラングだ。そんなスラングがネット上に飛び交うほどの“1強”体制を中国に築いた習近平氏。異例の3期目をスタートさせた習近平独裁政権がここからどんな道を歩むのか。中国の近未来を読み解いた。
【写真を見る】露骨な“お気に入り”人事 習近平独裁体制から見る中国の近未来・・・【報道1930】
■「この瞬間、新しい時代が始まった」
習近平政権の3期目突入を謳った中国共産党第20回全国代表大会が22日幕を閉じたが、この閉会式で驚く出来事があった。大会のフィナーレに向けテレビカメラの入場が許された時、檀上での一幕。中央に鎮座する習近平氏の隣にいた前国家主席胡錦濤氏の腕を側近が抱え退席を促している。拒む胡錦濤氏。黙って見つめる習近平氏。音声は聞き取れないが、胡錦濤氏は明らかに不満そうだ。立ち上がるまでにおよそ40秒。その後も動こうとはせず、時に席に戻ろうとするも叶わずさらに40秒ほどごねた末に習近平氏に何やら言葉を投げかけ、自らが育てた李克強首相の肩に手を置いた後よろよろと退出した。敢えてカメラが入るタイミングで起きたひと悶着。一体誰が描いたシナリオなのだろうか…。世界の外交官の中で最も多く習近平氏と食事を共にしたことがあるといわれる宮本雄二元駐中国大使も首をかしげる。
元駐中国大使 宮本雄二氏
「共産党のあらゆる決定は事前に根回しできているものなんです。胡錦濤氏が反対ならば、はじめから“病気”にさせればいいんです。だから反対票を投じるからというならば他に打つ手があっただろうし…胡錦濤氏も年をとって多少頑固になったかもしれないが、何か意識的に和を乱すタイプではない…どうして嫌がるようなそぶりを見せて外に出したのか正直言って分からない」
これに対し、真相は分からないとしながらも、胡錦濤氏側が意図的に仕組んだ可能性を指摘したのは東京大学大学院、中国研究の第一人者高原明生教授だ
東京大学大学院 高原明生教授
「可能性の1つは政治的意図のない単なる体調不良。もう一つは習近平氏のほうで胡錦濤氏が反対の声を上げるのを避けようとした。そしてもう一つは逆に胡錦濤氏が不満を表そうとした。露骨に反対の声を上げると党内の安定団結を乱す不届きな行為になりますから大変微妙なやり方で自分の不満を表した…」
これを時代が変わったことを見せつけるパフォーマンスと見るのは中国の政治経済の専門家呉軍華氏だ。
日本総研 上席理事 呉軍華氏
「私もこれを見て驚きました。本当の理由は知る由もありませんが、シンボリックに見えました。この瞬間、新しい時代が始まったんだって。今までとは全く違う時代に入ったんだっていう印象はあります」
真相は分からないが、この出来事の後、習近平氏は大会が成功裏に終わったことを高らかに宣言し、新体制をスタートさせた。