ロシア国旗
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、仰天策を打ち出した。殺人や強盗といった重罪を犯した人々の軍への動員を合法化する法改正が行われ、プーチン氏が署名して発効したのだ。ウクライナ戦線での戦況悪化が続き、兵員不足の深刻化も伝えられ、司令官も相次いで解任するロシア。元殺人犯や元強盗犯まで駆り出す末期的状況に追い詰められた。
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セルゲイ・ショイグ国防相は10月28日、30万人の予備役を招集するとした「部分的動員」の完了をプーチン氏に報告した。露大統領府が発表した。ショイグ氏によると、訓練を終えた8万2000人がウクライナ国内に派遣され、このうち4万1000人がすでに部隊に配属。プーチン氏は今月4日、最終的に約32万人が動員されたことを明らかにしている。
だが、予備役だけでは、兵員不足は解消できなかったようだ。法改正では、これまで動員を禁止していた「重罪を犯した者」のうち、殺人や強盗、麻薬犯罪で有罪となった受刑者や犯歴のある人間を禁止の対象から外した。動員できないのはテロやハイジャック、スパイ行為などで有罪とされた者に限定される。
米CNNは、新たに動員対象となった元犯罪者らについて、「通常、犯罪歴が抹消されるまで8~10年の間、当局の監視下に置かれる。自宅から出ることを禁止され、さまざまな制限を守ることが求められる」人間と伝えている。
こうした人間たちまで動員しなければいけないほど、ロシアは追い詰められている。
幹部の更迭が相次いでいるロシア軍で、また司令官の解任情報が出ている。英国防省は6日、ロシア軍中央軍管区のラピン司令官が解任され、司令官代行としてリンコフ少将が任命されたとの分析結果を明らかにした。
ロシア軍は5つの軍管区に分かれており、中央軍管区はウクライナ東部戦線に携わっているとみられる。東部と西部の司令官も10月に解任が伝えられたほか、総司令官もスロビキン氏に交代したばかりだ。
英国防省はツイッターで、更迭劇を「ロシア国内の指導者層に対する不満をそらそうと試みている可能性がある」と分析。他国に対しては強気の姿勢を貫くプーチン氏だが、反戦デモも起きている国内世論を気にしているようだ。