三選果たした習近平の誤算

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【中国深層リポート】共産党内の反発で、思い通りにならなかった党規約改正

三選果たした習近平の誤算

習首席=CC BY /Secretary of Defense

 習近平への忠誠心とイデオロギーの一致が、能力よりも重視された指導部メンバーが発表された。その翌日、中国株は国内外の市場で急落した。投資家が新指導部に対する失望を表明したのだ。習近平が市場開放追加策など株暴落を防ぐ手を打ったにも関わらず、外資は競い合って逃げ出す有様だった。

 中国国内にも悲観的な雰囲気が漂っている。不動産市場もバブル崩壊の兆しをみせ、豪邸が半額で売られ始めた。

 知人からは「定年になったが資産は持っているので、日本への移民は可能か」との問い合わせがあり、驚いた。著名な映画監督の馮小剛がアメリカ・ロサンゼルスの豪邸で暮らす写真がSNS「微博」で拡散し、彼と家族がアメリカに逃げ出したと伝えられた。22万のフォロワーを誇る彼の「微博」の書き込みは全て消された。

 知人の多くは「二十大のあとに、中国はゼロコロナ政策を中止すると期待していたのに、この指導部の顔ぶれではもう期待ができない」と嘆く。「CCTV」など政府系メディアに習近平の”勝利”と宣言された「二十大」のあと、中国の人々は重苦しい失望感に襲われて「習近平の新時代」を祝う雰囲気はなかった。

 習近平の最大の誤算は党の規約修正だ。目指す「北朝鮮化」の実現のために、個人崇拝禁止の条項を取り除き、自分を毛沢東並みの地位に持ち上げるはずだった。だが、実際に発表された修正案にはその目的は反映されていなかった。

 「習近平思想」もなければ、「人民領袖」や「二つの確立」もなかった。台湾に関しても「台湾独立を断固として反対し,抑制する」と追加しただけで、習近平が大会報告で公表した「決して武力行使の放棄を約束しない」と言う文言は加えることができなかった。党内に武力統一への反対意見が多く存在するのだろう。

 習近平が台湾を香港のように早く手にいれることに拘っていることは周知の通りだ。「二十大」期間中の17日に、「中国は台湾統一を早める意志を持っている」とブリンケン米国務長官が警告を発した。習政権に対する牽制だが、米国なりに掴んだ情報を分析した結果だろう。

 習近平は自分の任期内の台湾統一を計画しているのだ。従って、党規約に習近平の意向をもっと盛り込んでもいいはずだった。しかし、ふたを開けてみたら、修正は習近平報告よりもソフトな内容となった。また習近平終身制に有利な国家主席制度の復活のための規約改正も実現できなかった。

 この点こそ、一部の長老たちや軍のトップ及び党内の改革派など”反習近平勢力”の抵抗が功を奏した結果だと思う。今夏の「北戴河」会議では激しい争い(【中国深層リポート】
北戴河会議後も習・李の路線の違いくっきりを参照)があったと伝えられたが、その結果は「二十大」につながり、現在のような修正案となったとみられる。

 李克強首相も含めた共青団派が全員排除されたというのが大半の意見だが、李自らが引退覚悟で習近平に異議を唱え続けたという見方もあった。中国の路線を改革開放と逆の方向に向かわせようとする習近平派に抗議する意味で「青年団派」が全員身を引いたとも見える。

 その見方を裏打ちするのが10月24日の記事だ。新華網が新華社記者の署名付きの記事で新しい政治局常務委員選抜を取り上げた。それによると、習近平は年初から党員たちと対話を重ね、意見をくみ上げたうえで、人事を決定、一部の党と国家指導同志は自ら退職を希望したと強調した。

 習近平派が勝利した指導部人事だが、晴れの舞台に登場した7人の顔には笑顔がなく、規則を破った後ろめたさが隠せなかった。

 胡錦涛が大会の閉幕式で不本意に退場させられたことも習近平の勝利をアピールしたい「二十大」に影を落とした出来事の一つだ。習政権は胡氏の健康問題が退場の理由だとごまかしたが、余波は大きく広がった。

 胡一族軟禁説から息子の逮捕説まで、噂が後を絶たない。中国政府は息子の胡海峰・浙江麗水市書記をメディアに登場させるなどして、噂の取り消しに躍起だ。恩人である胡錦涛をあのような形で退場させた習の冷酷さが世間に知られ、大きなイメージダウンとなったことは確かだ。

 このことは、今後の政権運営にも影を落とすだろう。

林 愛華 (国際ジャーナリスト)

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