ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日のビデオ演説で、ロシア軍への大規模な反転攻勢について、「最も重要事項である時期についての決定が下された」と述べた。本格的な領土奪還作戦を始める準備が整ったとの認識を示したものだ。
ゼレンスキー氏は演説に先立ち、軍司令官らと反攻のために新設した旅団や弾薬の供給態勢の現状、反攻の戦術などについて協議したと明らかにした。「前進に向けた複数の決定がなされた」とも語った。
ウクライナ陸軍の司令官は29日、露軍の攻撃に対する防衛を主な任務とする東部の前線を視察し、「まもなく活発な攻勢に転じるだろう」と述べたとSNSで明らかにした。
露軍はウクライナ軍の大規模反攻の開始を妨害するため、首都キーウへの無人機やミサイルを使った攻撃を強化している。ウクライナ側の一連の発言には、国民の士気を鼓舞する意図があるとみられる。
ウクライナ空軍によると、露軍は29日深夜から30日未明にキーウ方面に自爆型無人機31機を発射し、うち29機が撃墜された。無人機の破片で火災が発生するなどして1人が死亡し、13人が負傷した。キーウは29日未明と昼頃にも攻撃されており、5月中に17回という異例の頻度となっている。
露軍はウクライナの北方に位置し、侵略に協力するベラルーシに地上攻撃に転用可能な防空システム「S400」を最近、配備したとされる。ウクライナ軍の戦力分散を狙っているとみられる。
プーチン露政権は昨年秋に一方的に併合した東・南部4州の実効支配を強化している。プーチン大統領は29日、戒厳令下にある4州で「地方選挙」の実施を可能にする改正法に署名し、成立させた。改正法では、占領当局の命令に従わない住民の最大30日間の拘束、住民の露本土への強制移送を合法化した。
一方、ウクライナに拠点を置きプーチン政権の打倒を目指すロシア人部隊「ロシア義勇軍団」は29日、露領内に再進入したとSNSで明らかにした。プーチン氏は28日、国境警備の強化を指示していた。