近年、日本各地でクマによる人的被害が深刻化しており、特に「クマが人間を食べる」という凄惨な事件が後を絶ちません。2023年には痛ましい事件が相次ぎ、その脅威は私たちにとって無視できない身近な問題となっています。本書『アーバン熊の脅威』（宝島社）のダイジェスト版を通して、増え続けるクマの危険性と現状を詳細に分析します。
2023年11月、北海道の大千軒岳で登山中の22歳男子大学生がクマに襲われ、遺体で発見されるという衝撃的な事件が発生しました。警察がヒグマの胃の内容物を調査したところ、大学生のDNA型と一致し、クマに襲われ食べられたことが確定しました。この事件は、クマが人間を襲って食べるという事実を世間に改めて認識させ、大きな衝撃を与えました。
2023年に相次ぐ悲惨なクマ襲撃事件
2023年には、大千軒岳の事件以外にも複数の悲惨なクマ襲撃事件が報告されています。同年5月には、北海道幌加内町の朱鞠内湖で釣りをしていた男性がヒグマに襲われて死亡しました。遺体は「ほぼバラバラ」の状態で、頭部と胴体が離れた場所で発見されたといいます。さらに、胴体は草木で覆われており、ヒグマが「保存食」として隠していたとみられています。射殺されたヒグマの胃袋からは約9キロもの内容物が見つかり、その中には被害者の肉片や骨片が含まれていました。
同年10月には、富山市南部の住宅地で70代の女性がクマに襲われ死亡する事件が発生。被害者の顔の損傷が激しく、身元特定に時間を要しました。死因は首や胸の骨折に伴う出血性ショックでした。
生存した被害者の外傷も深刻で、そのほとんどが顔面に集中していることが特徴です。ある医療論文によると、眼球を失ったり、鼻を全欠損したりといったケースが目立ちます。ある形成外科医は、被害者の「眉間から両下まぶた、頰、鼻、上口唇がひとまとまりになったもの」を救急隊員が路上で発見した事例を明かしており、その被害の甚大さを示しています。
クマによる人的被害のイメージ写真
「肉の味を覚えた」OSO18：家畜被害から人的被害への懸念
人的被害だけでなく、家畜への被害も深刻化しています。北海道の標茶町と厚岸町では、2019年以降に「OSO18（オソジュウハチ）」と呼ばれるヒグマが放牧中の牛を66頭も襲う事件が発生しました。OSO18は通常のヒグマと異なり肉を主食としており、ハンターが撃ったシカの死骸を食べて肉の味を覚えた可能性が指摘されています。
専門家らは、今後もクマによる人身被害や家畜への被害は「さらに増加していくだろう」と見ています。クマの生息域の拡大も進んでおり、都市部やその周辺に出没する「アーバンベア」は私たちにとって無視できない身近で危険な問題となっています。
これらの事例が示すように、クマは単なる野生動物ではなく、その脅威は私たちの日常生活にまで迫っています。クマの生態への理解を深め、適切な対策を講じることが、これ以上の悲劇を防ぐために不可欠です。
参考資料:
- 文春オンライン
- 『アーバン熊の脅威』（宝島社）
