近年、世界中で人気を博している日本のアニメ。その経済効果は大きく、日本政府もさらなる成長を期待しています。しかし、その輝かしい裏側には、低賃金や長時間労働など、アニメーターの過酷な労働環境が問題視されています。
国連が指摘する「搾取構造」とは？
2024年5月、国連人権理事会は、日本のアニメ業界における労働搾取の実態を明らかにした報告書を発表しました。報告書では、アニメーターの低賃金、過度な長時間労働、不公正な契約などが指摘され、「搾取されやすい環境」と厳しく批判しています。
例えば、アニメーターの時給は、他の業種と比べて極めて低いのが現状です。日本総合研究所の調査によると、アニメーターの時給の中央値は1316円であるのに対し、他の145業種の平均は2220円となっています。
アニメーターの時給の低さがわかるグラフ
さらに、長時間労働も深刻です。納期に追われ、睡眠時間を削って作業するアニメーターも少なくありません。このような過酷な労働環境は、アニメーターの心身に深刻な影響を与えかねません。
国連は、このような状況を生み出している要因の一つとして、日本のアニメ業界特有の「製作委員会」方式を挙げています。
製作委員会方式とは？
製作委員会方式とは、アニメ製作に必要な資金を、複数の企業が出資し合って賄う仕組みです。アニメ製作会社、テレビ局、広告代理店など、様々な企業が製作委員会に参加し、出資比率に応じて利益を分配します。
この方式は、巨額の製作費がかかるアニメ製作のリスクを分散できるというメリットがあります。しかし、その一方で、製作委員会が作品に対する決定権を持つため、アニメーターの声が反映されにくいという側面も持ち合わせています。
海外からの批判と不買運動のリスク
国連の報告書を受け、海外の動画配信サービスや消費者からは、日本のアニメ業界に対する批判の声が上がっています。このままでは、日本のアニメが「人権侵害に加担している」とみなされ、不買運動に発展する可能性も否定できません。
実際に、国連人権理事会のピチャモン・イェオファントン氏は、「日本のアニメ作品がNetflixやAmazonから排除される可能性は常にある」と警告しています。
アニメ業界の未来のために
世界中の人々を魅了する日本のアニメ。その未来を守るためには、アニメーターが安心して働き続けられる環境を整備することが不可欠です。
政府は、アニメ業界の労働環境改善に向けた取り組みを強化していく方針を示しています。しかし、真に持続可能な業界を構築するためには、業界全体で意識改革を進め、アニメーターの待遇改善や労働時間の短縮など、具体的な対策を講じていく必要があります。
