木村花さん死去から5年、母・響子さんが語るフジテレビへの「人権意識の欠如」と法廷闘争

プロレスラーとして将来を嘱望されながらも、5年前に22歳という若さで自ら命を絶った木村花さん。その死は、リアリティ番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」への出演を契機としたSNS上の激しい誹謗中傷が原因とされています。生前の花さんは、番組の「悪意のある編集」について言及しており、母であり元プロレスラーの響子さんは現在、フジテレビと同番組の共同制作会社を相手取り、法廷で闘いを続けています。響子さんは現在の状況について、「フジには人権意識がまるでない」「次の被害者が出る」と強い危機感を表明しています。この裁判の現状と、響子さんが抱く思いについて詳細を伝えます。

木村花さんと母・響子さんがベトナム旅行で撮影した思い出の写真木村花さんと母・響子さんがベトナム旅行で撮影した思い出の写真

提訴の背景とフジテレビ側の主張

響子さんが2022年12月にフジテレビらを提訴した裁判は、「出演者の心身の健康への注意や配慮を怠った」という点を主な争点としています。この裁判は誹謗中傷のリスクを避けるため非公開で行われていますが、被告側(フジテレビら)は花さんの死に対する責任を一貫して否定する姿勢を見せていると響子さんは語ります。彼らの主張は、誹謗中傷はあくまで社会問題であり、番組制作側には責任がないという論理に基づいています。

テラスハウスは番組冒頭で「台本は用意していません」とテロップ表示していましたが、話を盛り上げるための演出や編集が存在したことは明らかです。事実に基づいたドキュメンタリーだと誤解した視聴者が、意図的に切り取られた花さんの姿を基にバッシングを過熱させたのであれば、その誤解を生じさせた側に大きな責任があると響子さんは考えています。

また、裁判所から番組の未編集動画や企画書などの証拠提出命令が出されたにもかかわらず、フジテレビ側は「職務上の秘密」を理由に提出を拒否。さらに、放送倫理・番組向上機構(BPO)への答弁書では、花さんの死の背景要因として母娘関係の悩みを挙げたとされ、遺族の心を折りにくるような対応が続いていると感じていると言います。

第三者報告書と元社長の発言への憤り

今年3月、フジテレビは元タレントの中居正広氏に関連する一連の問題を受け、第三者委員会による調査報告書を公表しました。この報告書の中で、花さんの事案が過去の「深刻な人権問題」として認定され、これまでのフジテレビの対応が不十分だったと指摘されています。

報告書には、響子さんが裁判を起こすまで、フジテレビの取締役会でテラスハウス問題に関する報告や議論が行われなかったことが記されていました。さらに、港浩一前社長が中居氏の問題発覚時に「(被害女性の)自死の恐れが一番怖かった。テラスハウスの件のようになったら責任をとれないという思いがずっとあった」と話したとされる記述に対し、響子さんは「はらわたが煮えくり返る思い」だったと語気を強めます。娘が命を奪われたにもかかわらず、なぜこれほど他人事のように話せるのか、と憤りを感じています。

報告書でも指摘されているように、テラスハウスの問題も中居氏の問題も、根底にはフジテレビの人権意識の欠如があると同氏は見ています。花さんの事件があった際にフジテレビが自らの非を認め、自浄作用が働いていれば、中居氏の一件は防げたはずだとの考えを示しました。

裁判での対応と「二枚舌」への疑念

現在、フジテレビは人権尊重を掲げ、新しく生まれ変わる姿勢をアピールしていますが、足元の裁判では依然として花さんの人権を無視した主張や、十分な証拠を出さない非協力的な態度を続けていると響子さんは指摘します。彼女から見れば、これは「二枚舌」としか映らず、過去の問題を切り捨てて水に流そうとしているのではないかという疑念を抱いています。スポンサー離れのような外圧がかかればすぐに第三者委員会を立ち上げる一方で、一個人が声をあげても無視するという対応の差には、強い失望を感じています。響子さんは、このままでは新たな被害者が出るのではないかと危惧し、法廷での闘いを続けています。

参考文献

Yahoo!ニュース (dot.asahi.comより)