30代半ば・独身・子ナシ女性が『虎に翼』で叫びそうになったあのシーン。【まだまだ語る会】私たちが“壁”を越えるには


【イラストで見る・telling,『虎に翼』を語る会】

社会の矛盾とマイノリティーを描いて

北村有・ライター: 私は30代半ばの独身で子どももいないので、社会とのつながりが希薄だと感じる時があります。このドラマの脚本を手がけた吉田恵里香さんは「社会から見ないようにされてきた人たちをきちんと描きたい」とインタビューで話していました。マイノリティーとされている人だけでなく、私のように、結婚も出産もタイミングがうまく合わなくて、社会とのつながりが仕事しかない人は、確かに存在が見えていない「透明な存在」であるように思います。

自分のようなフリーランスには産休・育休の制度はなく、子どもを産み、育てることをどうしても自分の身に引き寄せて考えることができない。果たして自分は守られる存在なのだろうか……。ドラマでは、寅子の後輩である判事補の女性が、寅子に妊娠を相談していました。「自分のキャリアを閉ざさなければならない」と話す彼女に、寅子は、「どんな選択でも応援するし、もし判事を続けたいなら、必ず居場所を残す」と答えていて。先輩や上司からこうした言葉をもらえたら心強いですし、近くに寅子のような人がいたら、きっと安心して自分自身と向き合えるだろうし、前に進んでいけそうです。

清繭子・ライター: 放映時に話題にもなりましたが、寅子の生理痛が重くて、勉強や仕事がままならなかったことも描かれていました。今では生理休暇、ウェルネス休暇などの制度が整備されたものの、痛みの程度には人によって違いがあり、それを男性はもちろん、女性同士が分かり合うこともなかなか難しい。ドラマではそうしたことにも触れて、男性も見ているかもしれないお茶の間に届けてくれたことは意義があるなと。

別の論点ですが、憲法14条の「法の下の平等」をもとに、朝鮮の人々への差別や同性愛、性被害によって尊属殺人を犯した女性についてかなり斬り込んでいたことも、評価できました。登場人物を通じてそれらを描くことで、みんな私たちと一緒に生きている人が実際に抱えている間題なのだとあらためて感じられました。



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