日大運動部不正徴収問題
「9月末に大学から連絡が来るまで自分が学費免除の奨学生だと知りませんでした。4年間で計516万円の学費を払いましたが、本来支払うべき学費は77万円でした。まさか439万円もダマし取られていたとは……」
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日本大学の重量挙部の監督が、奨学生から免除されているはずの入学金・授業料など学費を不正に徴収していた問題。9月18日、日大は陸上競技部、スケート部でも同様の不正徴収があったことを発表した。
冒頭のように語るのは、陸上競技部OBの男性Aさん(20代)だ。
「重量挙部の件を知り、『また不祥事か。いい加減してほしい』と呆れていましたが、まさか自分も当事者の一人になっているとは想像もしていませんでした」
日大の発表によると、陸上競技部で不正徴収されていたのは過去10年で短距離部門6名、跳躍部門14名、投てき部門5名の計25人。部の幹部が何の説明もせずに奨学生として免除された学費の全額、または一部を徴収。不正徴収した金銭は、奨学生ではない部員の授業料や施設整備資金に充てていたとしている。
なお、スケート部に関しては、過去7年でアイスホッケー部門の29人の奨学生が部の幹部によって学費を不正徴収されていたと明かした。
監督名義の口座
日大が重量挙部の不祥事を公表したのは7月12日。奨学生である新入部員に対し、監督が「納付金の免除は2年目から」などと虚偽の説明が書かれた入学案内と納付金の請求書を送付し、本来支払う必要のない1年時の学費を部の口座に振り込ませていた。
一方、陸上競技部では、部の幹部から何の説明もないまま、4年間にわたって本来支払う必要のない学費を不正徴収されていたケースもある。Aさんが経緯を説明する。
「高校3年時のインターハイで入賞し、陸上競技部の井部誠一監督から『ぜひうちに来てくれないか。ただ、学費は親に相談してほしい』と声をかけていただきました。
他大学から学費全額免除の誘いもありましたが、強豪である日大で勝負してみたかった。うちは母子家庭であり、私立大学の学費を支払うのは難しい状況でしたが、すでにリタイアしていた祖父が親族らから借金をして送り出してくれました。
4年間に支払った学費は合わせて516万円になります。学費は部から指定された監督名義の口座に振り込みました。『日本大学陸上競技部 代表者 井部 誠一』名義の三菱UFJ銀行の口座、『日本大学陸上競技部 井部 誠一』名義の三井住友銀行の口座です。
現在社会人であるAさんが、じつは自身が奨学生だったことを知ったのは9月末。日大から「陸上競技部における不適切な金員徴収のお詫びと返金手続きの御案内について」と題する文書が実家に届き、その後、日大側の弁護士からAさんに電話で連絡があったという。
「私はずっと日大に取ってもらったという思いで競技を続けていました。お金のことで家族に負担をかけましたし、自分にとっても一番の悩みでした。
言い訳はしたくありませんが、費用を理由に飛行機代などがかかる地方大会の出場を断念したこともあり、不正徴収がなければ競技者としてチャンスが広がっていたのかな、という思いはあります。
学費のことで悩んだ4年間は何だったんだろうなって。思わぬ事実を知り、いまだ気持ちが整理できません」