トヨタの多角化戦略:EVシフトの波に乗り遅れた欧州勢を尻目に勝ち進む未来とは?

欧州自動車メーカーの苦悩:EV化目標の頓挫

2030年までに新車販売の全てを電気自動車(EV)にするという目標を掲げていたボルボは、2024年9月にその目標を下方修正。2030年までに世界販売台数の90~100%をEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)にするという、従来よりも現実的な目標を打ち出しました。

欧州の自動車メーカーは、EVシフトの波に乗り遅れつつある欧州の自動車メーカーは、EVシフトの波に乗り遅れつつある

ボルボだけではありません。メルセデス・ベンツグループも、2021年に宣言した「2030年までに全販売車種をEVにする」という目標を撤回。2030年代以降もPHEVなどエンジンを搭載した電動車を販売し、各地域の排ガス規制に対応するために新しいエンジンの開発も進めています。

なぜ、欧州の自動車メーカーは、このようにEV化目標を下方修正せざるを得ない状況に追い込まれているのでしょうか?

その背景には、世界的なEV需要の減速、韓国のヒョンデや中国のBYDといった新興メーカーによる低価格EVの台頭、ウクライナ侵攻によるエネルギー供給の不安定化など、さまざまな要因が考えられます。

トヨタの戦略:マルチパスウェイで未来を勝ち取る

一方、日本のトヨタ自動車は、「マルチパスウェイ」と呼ばれる戦略を掲げています。これは、EVだけに頼るのではなく、燃料電池車(FCHV)、ハイブリッド車(HEV)、PHEV、水素エンジン車など、さまざまなパワートレインを地域やニーズに合わせて柔軟に組み合わせることで、カーボンニュートラルを実現しようという考え方です。

トヨタは、マルチパスウェイ戦略で未来を勝ち取ろうとしているトヨタは、マルチパスウェイ戦略で未来を勝ち取ろうとしている

トヨタは、以前からEVの開発にも力を入れており、2020年には中国のBYDとの合弁会社を設立し、EVの共同開発を進めています。また、北米市場では、燃費性能に優れたハイブリッド車が好調な販売を記録しています。

欧州の自動車メーカーは、燃費性能でトヨタのハイブリッド車に勝てず、その対抗策としてEV戦略を推し進めてきました。しかし、EVは充電インフラの整備や航続距離の短さ、価格の高さなど、ユーザーにとって克服すべき課題が多く、さらにヒョンデやBYDの低価格EVの攻勢により、シェアを奪われつつあります。

こうした状況を踏まえ、トヨタのマルチパスウェイ戦略は、先見の明があったと言えるでしょう。トヨタは、パワートレイン技術の進歩やインフラ整備などを総合的に判断し、それぞれの技術開発に積極的に取り組んでいます。水素の分野ではBMWと、EVの分野ではBYDと提携し、開発を加速させています。

トヨタが今後、満を持して新世代のEVやFCHVを市場に投入する時、それはまさに「勝ち戦」となることでしょう。