「同業他社への転職は認めない」ルールは有効なのか? 会社は「競業避止義務違反」を主張、裁判の行方は


営業職の相談者(40代)は、転職で年収アップの夢が叶いました。しかし、前職のA社から「顧客リストを流用して営業している」として訴えられたというのです。

A社は過去に同業他社への転職者に対して訴訟を起こした事を知っていたので、男性は一切顧客と接触していませんでしたが、それでも訴えられてしまったことに困惑しています。

男性としては、訴訟にかかる費用や現職の会社に迷惑がかかる事に頭を抱えていますが、どのように対応すればよいのでしょうか。石濱嵩之弁護士に聞きました。

●競業避止の範囲は様々、「同業他社全般への転職を禁止」の場合も

会社に対する労働者の競業避止義務は、株式会社に対する取締役の競業避止義務(会社法356条1項1号)のように法律上定められた義務ではなく、その内容は1つに定義づけることはできません。

労働者が会社に対して、どのような内容の競業避止義務を負っているのかは、労働契約や就業規則、誓約書などの個別合意によって定まることとなります。

そのため、誓約書を作成していないような場合でも、入社時の労働契約や就業規則に規定があるケースにおいては競業避止義務を負っていると判断される可能性があります。

反対に、こうした競業避止義務を負うことを内容とする合意が何もないという場合には、労働者は競業避止義務を負っていると判断される可能性は乏しいといえるでしょう。

――同業他社へ転職した場合、営業先が重なることは珍しくないように思えますが、これは原則として競業避止義務違反に当たるのでしょうか。

この点についても、個別事情の下で、労働者が会社とどのような内容の競業避止義務を負うことについて合意したのか(競業避止条項)を考えていくことになります。

労使間の競業避止条項には、同業他社全般への転職を禁止するという規定もあれば、退職してから●年経過していれば規制対象外とするものや、営業エリアが重ならなければ規制対象外とするものまで様々です。

転職先の同業他社が、こうした条件に照らして規制対象となる場合には、競業避止義務を負っていると判断される可能性があるということになります。

しかしながら、以下に見ていくように、裁判例においては、労使間の競業避止条項の有効性について相当に制限する立場を取っているように分析されます。



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