食品ロス問題、深刻さを増すばかりです。日本では毎日、国民一人当たりおにぎり一個分の食べ物が捨てられているという現実。一体どうすればこの現状を変えられるのでしょうか?この記事では、食品ロス削減の新たな取り組みと、私たち一人ひとりができることを探っていきます。
バイオガス発電:食品廃棄物からエネルギーを生み出す革新的な技術
福岡市にある「福岡バイオフードリサイクル」の工場では、コンビニやスーパー、ホテルなどから出る食品廃棄物をバイオガス発電の燃料として活用しています。集められた食品廃棄物はクレーンで掴み取られ、破砕機へ。そこで細かく砕かれた後、発酵処理によってメタンガスが発生します。このメタンガスを利用して発電機を回し、ビルなどに電力を供給しているのです。年間発電量は一般家庭約2700世帯分の年間使用量に匹敵する、なんと約1万2000メガ・ワット時!
福岡バイオフードリサイクルの工場内でクレーンで食品廃棄物を掴み上げる様子
JFEエンジニアリングのグループ会社が設立した同社。今年5月から本格稼働を開始した工場長、滝本秀樹氏(57)は、「食品リサイクルの大きな可能性を感じている。再利用によって無駄を減らし、持続可能な社会の実現に貢献したい」と語っています。食品ロスを資源に変える、まさに未来への希望となる取り組みと言えるでしょう。
食品ロス半減目標達成!でも、まだ道半ば…
農林水産省と環境省のデータによると、2022年度の日本の食品ロスは合計472万トン。これは国連世界食糧計画の23年の世界の食料支援量370万トンを上回る規模です。政府は食品ロス削減目標を掲げ、2000年度の980万トンから半減させるという目標を8年前倒しで達成しました。
食品ロスの現状を示すグラフ
しかし、現状でも年間4兆円の経済損失が発生しているという現実。消費者庁食品ロス削減推進室の田中誠室長は、「もはや大量生産、大量消費の時代は終わり、持続可能な生産と消費のあり方へと転換する必要がある」と警鐘を鳴らしています。
食品自給率の低さと食品ロスの多さ:日本の抱える矛盾
食品ロス削減推進法が施行された2019年10月30日、「食品ロス削減全国大会」が群馬県高崎市で開催されました。会場には賞味期限内のそうめんやスナック菓子、カレーのルーなど、来場者から提供された食品でいっぱいの箱が設置されていました。食品自給率が低い日本において、これほどの食品ロスが発生している現状は、大きな矛盾と言えるでしょう。食料安全保障の観点からも、食品ロス削減は喫緊の課題です。
私たちにできること:小さな一歩から大きな変化へ
食品ロス削減は、企業の取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの意識改革も不可欠です。買い物の際は必要な量だけ購入する、冷蔵庫の食材をきちんと管理する、食べ残しをしないなど、日常生活の中でできることから始めてみましょう。未来の世代のために、そして持続可能な社会の実現のために、食品ロス削減への意識を高めていきましょう。