日本の報道の「偽の中立」:真のジャーナリズムを取り戻せるか?

大手メディアの報道姿勢に、疑問の声が高まっている。政治腐敗に対するチェック機能としての役割を果たせているのか、真に国民の「知る権利」に応えているのか。本稿では、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏の著書『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(朝日新聞出版)を参考に、日本の報道の現状と課題について掘り下げていく。

ジャーナリズムの役割とは?

健全な民主主義国家においては、政治腐敗が発生した場合、司法検察とジャーナリズムが中心となって自浄作用が働く。検察は権力に左右されず、法律違反があれば誰であっても起訴する。一方、ジャーナリズムは権力から独立した立場で調査・分析を行い、国民の「知る権利」に応える報道を行う。これは、ジャーナリズムの根幹を成す重要な役割である。

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日本の報道の現状:「偽の中立」という問題

しかし、現在の日本の報道機関は、この役割を十分に果たせているとは言えない。山崎氏は、大手メディアが「偽の中立」という姿勢をとっていると指摘する。本来、ジャーナリズムは「公正に対する中立」であるべきだ。つまり、不正や不公正な行為に対しては、断固として批判的な立場をとる必要がある。しかし、日本の大手メディアは、対立する双方の問題点を等しく指摘するという「偽の中立」に陥っている。これは、真のジャーナリズムとは言えないだろう。

「偽の中立」と「真の中立」の違い

ジャーナリズムにおける中立性とは、単に双方の主張を平等に伝えることではない。重要なのは、事実を客観的に検証し、公正な判断に基づいて報道することだ。例えば、片方が明確な嘘をついている場合、それを指摘せずに「双方の主張がある」と伝えるのは、中立ではなく、むしろ真実を歪曲する行為と言える。ジャーナリズム倫理の専門家である、架空の山田教授は「真の中立とは、権力や圧力に屈せず、真実を追求する姿勢のことだ」と語る。

なぜ「偽の中立」が生まれるのか?

「偽の中立」が生まれる背景には、様々な要因が考えられる。大手メディアは、政権や大企業との関係を重視するあまり、批判的な報道を避けようとする傾向がある。また、視聴率や部数獲得を優先し、センセーショナルな報道を重視するあまり、事実に基づいた冷静な分析が疎かになっている側面もある。

真のジャーナリズムを取り戻すために

日本の報道機関が真のジャーナリズムを取り戻すためには、何が必要だろうか。まず、権力や圧力に屈しない独立した報道姿勢を確立することが重要だ。また、事実に基づいた客観的な報道を行い、国民の「知る権利」に応える責任を果たすべきだ。さらに、メディアリテラシー教育の充実も不可欠だ。国民一人ひとりが情報を読み解く力を養い、メディアの報道姿勢を批判的に評価できるようになることが重要である。

まとめ:日本の報道の未来

日本の報道の未来は、メディア関係者だけでなく、私たち国民一人ひとりの意識にかかっている。真のジャーナリズムを取り戻し、健全な民主主義社会を実現するために、共に努力していく必要があるだろう。