米国の電気自動車(EV)購入補助金廃止の可能性が、現代自動車グループの戦略に大きな影を落としている。トランプ次期大統領の政権移行チームが補助金廃止を推進するとの報道を受け、現代自動車は米国での車種別生産比率の再検討を余儀なくされている。ジョージア州に建設中の新工場「メタプラント」は、当初EV専用工場として構想されていたが、補助金廃止となれば販売への影響は避けられない。しかし、現代自動車はハイブリッド車(HV)戦略を強化することで、この逆境を乗り越えようとしている。
EV補助金廃止で激震走る自動車業界
ロイター通信が入手した政権移行チームの内部文書によると、最大7500ドルのEV税額控除が廃止される見込みだ。このニュースは韓国自動車業界にも衝撃を与え、韓国産業通商資源部が主導する官民合同会議で対策が議論された。専門家の中には、補助金廃止により米国のEV販売台数が年間31万台減少すると予測する声もある。
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現代自動車、HV生産比率を高める柔軟な戦略
現代自動車は、メタプラントでのHV生産比率を高めることで、EV補助金廃止の影響を最小限に抑えようとしている。ウ・ジョンヨプ グローバル政策戦略室長は、「EVとHVの生産比率は市場の状況に応じて柔軟に対応する」と述べている。ムニョスCEOも、メタプラントの最大生産能力50万台の約3分の1をHVに割り当て可能だと示唆している。
米国で高まるHV人気
米国ではHVの人気が高まっており、現代自動車にとって追い風となっている。サムスン証券によると、2024年1月から10月までの米国のHV販売台数は前年同期比34.1%増の127万1000台。現代自動車・起亜のHV販売台数も好調で、10月は前年同月比64.9%増の2万1679台を記録した。
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HV戦略でトヨタを追撃?
サムスン証券のイム・ウンギョンEVモビリティチーム長は、「トランプ政権下でエンジン車需要の回復に向けた政策が打ち出されれば、HVとエンジン車を生産するトヨタと現代自動車・起亜が恩恵を受けるだろう」と分析している。HV市場でトヨタは58%のシェアを誇るが、現代自動車・起亜は11%で4位。HV戦略の強化は、トヨタを追撃する絶好の機会となるかもしれない。
テスラ、補助金廃止の影響は限定的か
一方、テスラはEV補助金廃止の影響は限定的と見ている。マスクCEOは、「補助金縮小の影響は、テスラよりも他社のほうが大きいだろう」と楽観的な見方を示している。自動運転規制緩和など、テスラにとってプラスとなる政策も期待されており、株価は上昇傾向にある。充電インフラ整備予算が削減された場合、テスラのスーパーチャージャーが市場標準となる可能性も指摘されている。
現代自動車の挑戦
EV補助金廃止という逆風下、現代自動車はHV戦略を強化することで生き残りを図ろうとしている。米国市場でのHV需要の高まりは、現代自動車にとって大きなチャンスとなるだろう。柔軟な戦略と迅速な対応で、この困難を乗り越えられるか、現代自動車の挑戦は続く。