母親の元交際相手から凄惨な虐待を受け、4歳の幼い命が奪われた痛ましい事件。2024年12月24日、横浜地裁で開かれた裁判員裁判で、検察側は被告に懲役12年を求刑しました。本記事では、この事件の背景、犯行の詳細、そして専門家の見解を通して、連れ子への虐待という社会問題に改めて焦点を当てます。
母親の悲痛な訴えと被告の無罪主張
裁判では、被害者の母親Aさんも出廷し、「最後まで本当のことを話さない被告に怒りを覚えます。刑はできるだけ長くしてほしい」と悲痛な思いを訴えました。一方、被告である内田正也被告(32)は「痰詰まりやソファからの転落で死亡した可能性がある」として無罪を主張しており、検察側と弁護側の主張は真っ向から対立しています。
元交際女性の連れ子を暴行死させたとされる被告(’22年8月の送検を撮影)
事件発覚までの経緯と虐待の兆候
事件の4ヶ月前、Aさんは内田被告による虐待を警察に相談していました。額にひどい腫れを負ったB君も「叩かれて怖い」と訴えていたといいます。警察は内田被告を任意聴取しましたが、虐待の意図は否定していました。児童相談所も家庭訪問を行っていましたが、悲劇を防ぐことはできませんでした。
2018年1月、内田被告から119番通報があり、B君は心肺停止状態で発見され、その後死亡が確認されました。死因は頸髄損傷による脳浮腫で、事故死の可能性は低いと複数の医師が証言しています。
専門家による被告の心理分析
元神奈川県警刑事の犯罪ジャーナリスト、小川泰平氏は、内田被告の心理について次のように分析しています。「内田被告はB君に歪んだ感情を抱いていたとみられます。Aさんの元交際相手の子どもであるB君を、Aさんの過去の『分身』と捉え、憎しみを抱いていた可能性があります。連れ子を虐待する加害者は、『子どもの存在が過去の交際を想起させる』という身勝手な理由で暴力を振るうケースが見られます」。
長期にわたる捜査と逮捕の背景
事件から約4年後の2022年8月、内田被告は傷害致死容疑で逮捕されました。逮捕まで時間を要した背景には、密室での犯行による証拠の少なさがあったと考えられます。小川氏は、「元交際相手のAさんの協力が逮捕につながったと思われます。証拠が少ない虐待事件は、事故死として処理されてしまうケースも少なくありません」と指摘しています。
連れ子虐待という社会問題
この事件は、連れ子虐待という深刻な社会問題を改めて浮き彫りにしました。子どもの安全を守るためには、周囲の大人たちが注意深く見守り、早期発見・早期対応に努めることが不可欠です。
判決と今後の展望
判決は2025年1月21日に言い渡される予定です。この事件が、社会全体で子どもを守るための意識を高める契機となることを願います。