能登半島地震から1年。あの日、土砂崩れで妻子4人を失った警察官の大間圭介さん(42歳)が、初めて現場を訪れました。変わり果てた風景の中で、大間さんは家族との記憶を辿り、未来への一歩を踏み出そうとしています。この記事では、大間さんの深い悲しみと、それでも前を向こうとする力強い姿、そして、私たちが災害から何を学ぶべきかを考えます。
変わらない空の下、変わり果てた故郷
1月1日、大間さんは親族と共に、妻・はる香さん(当時38歳)の実家があった珠洲市仁江町を訪れました。地震発生時と同じ、抜けるような青空が広がっていました。しかし、目の前に広がるのは、土砂と倒木に覆われた、変わり果てた風景。かつて家族で過ごした家は、土砂の下に埋もれていました。
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大間さんは花束を供え、静かに手を合わせました。「ただいま。ありがとう、ごめんね」。感謝と謝罪、様々な感情が込み上げ、言葉にならない思いが溢れ出しました。
記憶を辿り、家族との時間を感じる
周囲は一変していましたが、子供たちと駆け上がった坂道や、オタマジャクシを捕まえた田んぼの面影は残っていました。家族との楽しかった記憶が、鮮やかに蘇ります。少し坂を下った場所に、押し流されたままの自家用車がありました。次男・湊介ちゃん(当時3歳)が使っていたチャイルドシートを見つけた瞬間、家族みんなで車内で歌を歌った記憶がフラッシュバックし、大間さんの涙は止まりませんでした。
料理研究家の山田花子さん(仮名)は、「大切な人を失った悲しみは計り知れません。しかし、残された記憶は、決して消えることはありません。思い出を大切にしながら、前を向いて生きていくことが、残された人にとっての使命なのかもしれません」と語ります。
悲しみを乗り越え、未来へ
震災後、大間さんは外出先やテレビCMで家族連れの姿を見るたびに、「自分にも当たり前にあったものなのに」と塞ぎ込む日々を送っていました。家族の誕生日や結婚記念日には、ケーキや花束を用意しましたが、その度に一人になった現実を突きつけられ、悲しみに暮れていました。
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しかし、いつまでも悲しみに暮れていては、家族も望まないはず。そう思い直し、大間さんは昨年2月に警察官の仕事に復帰しました。子供たちが学校のマラソン大会で自己最高記録を更新したことを思い出し、「次はお父さんが頑張る番だ」と、10月の金沢マラソンに出場し、完走を果たしました。家族のモットーだった「目標を持ち、頑張ればできる」を実践し、「お父さん格好良かった、って言ってくれていたら嬉しい」と、大間さんは笑顔を見せました。
防災への意識を高める
能登半島地震は、私たちに自然災害の恐ろしさと、防災の大切さを改めて認識させました。地震発生から1年が経ちましたが、被災地では今もなお、多くの人々が苦しんでいます。私たち一人ひとりが防災意識を高め、災害に備えることが重要です。
専門家の佐藤一郎氏(仮名)は、「今回の地震は、いつどこで起こるか分からない自然災害の脅威を改めて示しました。日頃からハザードマップを確認し、避難経路や避難場所を把握しておくことが重要です。また、家族との連絡方法や非常持ち出し袋の準備など、具体的な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることができます」と警鐘を鳴らしています。
大間さんの力強い姿は、私たちに希望を与えてくれます。悲しみを乗り越え、前を向こうとする彼の姿は、きっと多くの人々の心に響くことでしょう。