通勤手当の不正受給:その境界線はどこにあるのか?

通勤手当。毎月の給与明細に載る、一見地味な存在。しかし、この通勤手当をめぐる不正受給が、実は深刻な問題となっていることをご存知でしょうか。東京都豊島区職員の不正受給事件のように、ニュースで大きく取り上げられるケースもあれば、水面下でひっそりと行われているケースも少なくありません。この記事では、通勤手当の不正受給の境界線、そしてそのリスクについて、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。

不正受給の2つのパターン

通勤手当の不正受給には、大きく分けて二つのパターンがあります。

パターン1:虚偽の通勤経路

一つ目は、実際とは異なる通勤経路を申請するケースです。例えば、恋人と同棲している、あるいは家族と別居してホテル住まいをしているといった場合、会社にプライベートな事情を知られたくないという思いから、本当の住所とは異なる場所から通勤しているように装うケースが見られます。

このようなケースでは、不正受給が長期化しやすく、同僚に目撃されたり、内部通報によって発覚するリスクが高まります。たとえやむを得ない事情があったとしても、半年以上にも渡って虚偽の通勤経路を申請し続けると、懲戒処分の対象となる可能性があります。通勤定期券の更新時などは、通勤経路の変更について確認される絶好の機会です。不正受給を続けている場合は、このタイミングで正直に申告することが重要です。

一方で、通院のため病院を経由して出社する、親の介護で週に数回実家から通勤するなど、正当な理由がある場合は、必ずしも不正受給とはみなされません。企業によって規定は異なりますので、人事担当者などに相談することをお勧めします。

通勤電車のイメージ通勤電車のイメージ

パターン2:会社に損害を与える行為

二つ目は、会社に損害を与えるケースです。通勤手当を受け取りながら、実際には徒歩や自転車で通勤している場合がこれに該当します。たまに徒歩で通勤するのは問題ありませんが、通勤手当を不正に受給する目的で常習的に徒歩や自転車で通勤することは、会社への背信行為であり、絶対に避けるべきです。

会社の規定によっては、公共交通機関を利用しない通勤方法を選択する場合、その旨を申告し、通勤手当の支給対象外となる手続きが必要な場合があります。このようなケースで、申告せずに通勤手当を受け取り続けることは、明らかな不正受給となります。

著名な人事コンサルタントである山田太郎氏(仮名)は、「通勤手当の不正受給は、金額の大小に関わらず、会社との信頼関係を損なう重大な行為です。発覚した場合、懲戒処分はもちろんのこと、社内での評価も大きく下がり、キャリアに深刻な影響を与える可能性があります」と警鐘を鳴らしています。

まとめ:誠実な対応を心がけよう

通勤手当は、労働者が通勤にかかる費用を会社が負担する制度です。この制度を悪用することは、会社だけでなく、他の社員に対しても不公平な行為です。通勤経路に変更があった場合は、速やかに会社に報告し、適切な手続きを行うようにしましょう。些細な不正が、大きな代償を払う結果につながる可能性があることを常に意識しておくことが大切です。