近年、ホテルやテーマパークなどで「ダイナミックプライシング」(変動価格制)が急速に普及しています。需要に応じて価格が変動するこのシステムは、インバウンド増加も相まって、宿泊費やレジャー費の高騰を招き、消費者の間で波紋を広げています。本記事では、ダイナミックプライシングの実態と課題、そして企業に求められる姿勢について探ります。
ダイナミックプライシングとは?そのメリット・デメリット
ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスに応じてリアルタイムで価格を変動させるシステムです。航空券やホテルの宿泊料金などで以前から活用されてきましたが、近年はテーマパークやイベントチケットなど、様々な分野に広がりを見せています。
企業にとってのメリットは、需要が高い時期に価格を上げることで収益を最大化できる点です。また、需要が低い時期には価格を下げることで、稼働率の向上や在庫の最適化を図ることも可能です。
しかし、消費者にとっては、価格の不透明感や高騰による負担増加が懸念材料となっています。「こんなに高かったっけ?」と驚く声や、富裕層向けのビジネスになっているという批判も少なくありません。
ホテルの価格表示
宿泊料金の高騰:ビジネスホテルも例外ではない
特に顕著なのが、ホテルの宿泊料金の高騰です。インバウンドの増加も重なり、都内のビジネスホテルでも1泊数万円という価格設定が珍しくなくなっています。SNS上では、「ビジネスホテルがダイナミックプライシングで3万円」「カプセルホテルで1泊1万7800円」といった驚きの声が多数上がっています。
旅行や出張の計画を立てる際、宿泊費の変動は大きな負担となります。従来の固定価格に慣れていた消費者にとっては、予算管理の難しさや急な価格変動への不安を感じている人も多いでしょう。
レジャー施設への影響:東京ディズニーランドの事例
ダイナミックプライシングの影響は、レジャー施設にも及んでいます。例えば、東京ディズニーランドでは、2021年3月にダイナミックプライシングを導入。1日券の価格は、7900円から1万900円と大きく変動するようになりました。
休日に家族で訪れる場合、チケット代だけで数万円の出費となることも。価格高騰に加え、「デジタル弱者は行けない」という声も聞かれます。チケットや各種パスの予約はオンラインが主流となり、デジタルスキルが求められる場面が増えているためです。
企業に求められる姿勢とは?
ダイナミックプライシングは、企業にとって収益最大化の有効な手段となる一方、消費者にとっては価格の不透明感や負担増加につながる可能性があります。このシステムを導入する企業には、価格設定の透明性や予測可能性を高める努力が求められます。
例えば、価格変動の基準を明確に示したり、事前に価格変動の範囲を告知するなどの対策が考えられます。また、デジタル弱者への配慮も重要です。予約システムの使いやすさを向上させたり、電話や窓口での対応を充実させることで、誰もが安心して利用できる環境を整備する必要があります。
消費者の声に耳を傾け、より良いシステム構築を
ダイナミックプライシングは、まだ過渡期にあります。企業は、消費者の声に耳を傾け、メリットとデメリットのバランスを取りながら、より良いシステム構築を目指していく必要があります。価格の透明性と予測可能性を高め、誰もが安心して利用できるよう、企業の責任ある対応が期待されます。