選挙カーが街を走り、候補者が路上で声を張り上げる。日本では見慣れた選挙風景だが、海外からの訪問者にはどのように映るのだろうか。本記事では、スペイン出身のカルラさんとアメリカ出身のアレックさんの視点から、「日本の選挙」文化の特異性に迫る。7月20日投開票の参院選を控え、街頭演説が活発化する中で、彼らは何に驚き、どんな違いを感じたのか。
外国人の目に映る日本の選挙文化
スペイン人カルラさんの視点
スペイン出身で日本在住16年のカルラさんは、ツアーガイド兼通訳として活躍している。スペイン語、英語、フランス語、日本語を操り、日本国籍も取得しているため、日本の選挙権も持つ。日頃から多くの外国人観光客と接する中で、日本の様々な文化に対する彼らの反応を目の当たりにしてきた。
スペイン出身、日本の選挙文化について語るカルラさん
カルラさんは、外国人観光客が日本の「ルール順守意識の高さ」や「街の清潔さ」に驚くことが多いと語る。また、「日本人が冷たい」という印象を持つ人もいるが、これは欧米のような初対面でのハグや近い距離感を好まない文化の違いであり、「冷たいわけではない」と自身の経験から説明する。
そんなカルラさんにとって、「日本の選挙スタイル」もまた大きな驚きだった。「スペインでは、政治家が路上で自由に演説することはまずありません。事前の許可を得た集会形式で、体育館や建物の中で行われるのが基本です」と、自身の母国の状況と比較する。スペインでは、許可を得た集会形式が主流であり、演説場所の管理や警備も厳格に行われている。日本のように、候補者が街頭で自由にマイクを使って訴えるスタイルは一般的ではないようだ。
安倍元首相銃撃事件と日本の警備体制への疑問
2022年7月、奈良県で発生した安倍晋三元首相の銃撃事件は、カルラさんにとって特に衝撃的だった。スペインでも大きく報じられたこの事件について、元警察官であるカルラさんの父親は「なぜあんなに警備が薄いのか」と驚きを隠せなかったという。
スペインでは、1970年代から2000年代初頭にかけてテロ事件が多発した歴史的背景から、政治家の警護体制は極めて厳重だ。演説は基本的に屋内で行われ、入場制限や金属探知機による検査が行われることも珍しくない。「スペインの政治家には、そんな簡単に近づけません」と、カルラさんは日本の街頭演説における距離感と警備のあり方に改めて言及した。
アメリカ人アレックさんの視点
一方、今回初めて日本を訪れたアメリカ・ワシントン州出身のアレックさんも、日本の選挙風景に強い印象を受けたと語る。観光で訪れた東京の街中で、偶然にも選挙の熱気に触れることになったという。
アレックさんは、「大きなマイクを載せた『選挙カー』が走っているのを見ました。アメリカではほとんど見かけない光景です。アメリカでは看板を立てて、政党の方針に賛同する人が投票するというスタイルが一般的です」と、母国との違いを説明する。日本のように、候補者個人が街頭で積極的にアピールする姿勢は、彼にとって非常に新鮮に映ったようだ。
このように、日本の選挙スタイル、特に街頭での活動やその警備体制は、スペインやアメリカといった異なる文化圏から来た人々にとって、驚きであり、同時に新たな気づきを与えている。当たり前だと思っていた日本の選挙文化が、世界の視点を通すことで、その特異性や背景にある価値観の違いが浮き彫りになる。
出典:ENCOUNT