教員による児童生徒への性暴力や盗撮事件が、社会に大きな波紋を広げている。最近の事件発覚を受け、文部科学省は2024年7月1日、各教育委員会などに対し、教員の服務規律徹底や性暴力に関する研修を含む必要な防止策を講じるよう求める通知を発出した。しかし、教員による性暴力はこれが初めてではなく、文科省の通知だけで問題の根本的な解決につながるのかは疑問視されている。
事件の概要と文部科学省の対応
今回の事件は、6月24日に愛知県警少年課が名古屋市立小坂小学校の教員(42)と横浜市立本郷台小学校の教員(37)を性的姿態撮影処罰法違反容疑で逮捕したことから明らかになった。逮捕された両教員は、女子児童を盗撮した画像を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有していたとされる。
このSNSグループには10人程度の教員が参加していたと言われているが、全員の氏名は特定されていない。7月1日の記者会見で阿部俊子文部科学大臣は、「当該教員がいれば子どもたちの前からすぐ離れて一刻も早く名乗り出てほしい」と呼びかけた。しかし、このような呼びかけだけで自主的に名乗り出る者がいるのかは現実的に考えにくい状況だ。
子どもや学校への影響を示すイメージ。教員による不祥事への疑問や繰り返される問題を示唆する。(関連キーワード:教員、事件、子ども)
相次ぐ不祥事と教育委員会の対応
先の逮捕発覚から間もない6月30日、盗撮での逮捕者を出した名古屋市の教育委員会は、複数のわいせつ事案を起こして不同意わいせつ罪で逮捕・起訴されていた別の市立小学校教員(34)を同日付で懲戒免職処分にしたと発表した。この教員は3月、名古屋市内の駅構内で15歳の少女のリュックサックに体液をかけたとして器物損壊容疑で逮捕されていた。
その後、児童2人の楽器に体液を付着させたほか、給食の食器内に体液を混入させたとして追起訴もされた。さらに、前述の盗撮画像交流グループにも参加していたとされる。相次ぐ不祥事を受け、ようやく名古屋市教育委員会も重い処分に踏み切った形だ。
児童生徒への性暴力防止啓発ポスターを作成する教育委員会の取り組みを示す画像。(関連キーワード:教育委員会、性暴力防止、学校、啓発)
保護者・文科相の反応と課題
こうした教員による性暴力(わいせつ)事件の発覚に対し、保護者などからは「驚いた」「信じられない」といった反応が多く報じられている。阿部文科相も、6月27日の記者会見で盗撮事件について問われ、「こうしたことにより教師への信頼、これが損なわれるような状況が生じていることにつきまして極めて遺憾に思います」と述べ、「断じて許せません」と強い言葉で非難した。
しかし、これらの反応は事件が発覚する度に繰り返されるものであり、「なんで先生が?」という驚きを超え、「また先生か」という諦めや怒りの声も聞かれる状況だ。文科省は通知や研修強化を打ち出しているが、過去にも同様の事案が繰り返されてきた経緯を踏まえると、表面的な対策に留まらず、再発防止に向けたより実効性のある抜本的な取り組みが求められている。教員による性暴力は、子どもたちの心身に深刻な傷を残す許されない行為であり、教育現場および社会全体での継続的な対策が不可欠である。