「本当はこんな話をしてはいけないのかも…」フジテレビ日枝久氏が「文藝春秋」に打ち明けていた〈フジテレビ流の社長人事の決め方〉


【画像】「踊る大捜査線」などで知られたフジテレビ元社長・亀山千広氏

 中居正広氏の女性トラブルをめぐり、窮地に立たされているフジテレビ。その批判の矛先は、フジテレビに長年君臨する日枝久氏にも向かっている。

 日枝氏はどのようにフジテレビを運営してきたのかーー。その一端を窺わせるのが、2017年、当時会長だった日枝氏がフジテレビの幹部人事の決定プロセスについて、 詳細に語ったインタビュー だ。

 この年、鳴り物入りでフジテレビ社長に就いた亀山千広氏を退任させ、当時すでに73歳だった宮内正喜氏を後任にあてた。さらに日枝氏自身は会長を退任するものの、取締役相談役、フジサンケイグループ代表として残った。そのトップ人事はすべて、日枝氏がただ一人で決め、重役たちも報道の前日まで誰一人知らされなかったという。ジャーナリスト森功氏による インタビュー ( 「文藝春秋」2017年7月号 )を一部紹介します。(文中敬称略)

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日枝氏が一人で決めた役員人事

「本当はこんな話をしてはいけないのかもしれないけど、彼はやっぱり苦しかったんでしょうね。内示として、『結果責任はあるから、今回は外れてもらうよ』と言い渡すと、彼は『ありがとうございます』と言い、肩の荷を下ろしたようでした」

 フジテレビではこの間、会長続投が当然のように思われてきただけに、首脳人事の注目点は、もっぱら社長レースだった。そこで最右翼と下馬評の高かったのが、専務の遠藤龍之介(61)だ。遠藤周作の長男で日枝編成局長時代には上司部下の関係で、何かと話題の尽きない日枝体制の下、広報部門を支えてきた。遠藤新社長はなかったのか。

「週刊現代に遠藤君が新社長と書かれたとき、僕は彼に秘書室で『おめでとう。社長になるんだってな。お前は広報担当なんだから、(亀山)社長にも週刊誌に出たと言わないと駄目だよ』と冗談を言いました。『いやー、僕は当事者だから言いにくいですよ』と言っていましたけど、秘書室でも週刊誌を回し読みしていて彼も困っていた。もちろん僕の頭の中には遠藤社長はなかったので、週刊誌報道があったから社長が消えたなんてこともありえません」

 今度のトップ人事は5月9日の報道当日まで、外部はもとより社内にも情報が洩れなかった。それは日枝がただ一人で決め、情報管理を徹底してきたからにほかならない。人事の草案を練ったのが4月21日から23日までの3日間、静岡県伊東市の川奈ホテルゴルフコースでおこなわれたフジサンケイレディスクラシックのときだ。

「決算発表が5月だから、連休前には大体決めておかなきゃいかん。毎年そうだけど、今回は1〜2月頃から考え始め、いろんな人に意見を聞きました。人事の具体的な話ではなく、プロダクションの人たちとか、OBやネット局の人たちとか、皆さん方の話を聞きながら、フジサンケイレディスクラシックのときに川奈(ホテル)で煮詰めていきました」

 社長レースでは先の遠藤以下、鈴木克明(58)、稲木甲二(61)という三専務の名前が候補に挙がった。他の役員人事を含め、その中身については、日枝の頭の中だけに封じ込まれ、当の重役たちでさえ、報道の前日まで誰一人知らされなかった。



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