【ジブリの意外な苦戦作】『風立ちぬ』が海外で評価されなかった理由とは?

宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が世界的な注目を集める中、改めてジブリ作品の魅力に惹きつけられる人も多いのではないでしょうか。しかし、輝かしい成功の裏には、意外な苦戦を強いられた作品も存在します。今回は、海外、特にフランスで苦戦した『風立ちぬ』について、その背景や理由を探っていきます。

夢と現実の狭間で:『風立ちぬ』の物語

ゼロ戦設計者と青春の葛藤

『風立ちぬ』は、航空機設計者・堀越二郎をモデルに、彼の青春時代からゼロ戦の完成までを描いた作品です。大正から昭和にかけての激動の時代、戦争や震災、世界恐慌といった困難に立ち向かいながら、夢に向かって突き進む二郎の姿は、多くの観客の心を掴みました。堀辰雄の小説「風立ちぬ」からもインスピレーションを得ており、繊細な心情描写も魅力の一つです。

風立ちぬのポスター画像風立ちぬのポスター画像

賛否両論を巻き起こした背景

戦争と平和へのメッセージ

本作は、ゼロ戦という戦争の象徴を扱っていることから、公開当時、賛否両論が巻き起こりました。「戦争礼賛」と捉える声がある一方で、「反戦映画」と解釈する声もあり、意見が大きく分かれたのです。特に韓国では、日本軍の描写に批判的な意見も上がりました。宮崎監督自身も記者会見を開き、作品に込めた平和へのメッセージを説明する必要に迫られました。

ジブリらしさの変化

従来のジブリ作品は、ファンタジー要素が強く、子供から大人まで楽しめる作品が多かったのに対し、『風立ちぬ』はより大人向けの内容となっています。そのため、従来のジブリ作品を期待していたファンからは戸惑いの声も聞かれました。

フランスでの苦戦:ジブリのイメージとのギャップ

ファンタジーの不在

特にジブリ人気が高いフランスでは、興行収入が『崖の上のポニョ』の半分にとどまるなど、苦戦を強いられました。フランスの映画評論家、ジャン=ピエール・デュモン氏(仮名)は、「フランスの観客はジブリ作品にファンタジーや夢を求める傾向が強い。『風立ちぬ』はリアリティを追求した作品であり、そのギャップが興行収入に影響したのではないか」と分析しています。

風立ちぬのワンシーン風立ちぬのワンシーン

宮崎駿の平和への想い

10年ぶりの新作との共通点

『風立ちぬ』は、宮崎監督の「引退宣言」直後の作品として大きな話題となりました。10年後の新作『君たちはどう生きるか』も、戦争を題材に平和の尊さを訴える作品となっています。宮崎監督の平和主義者としての側面が、作品を通して強く表現されていると言えるでしょう。

まとめ:時代を超えるメッセージ

『風立ちぬ』は、興行収入だけでは測れない価値を持つ作品です。戦争という難しいテーマに挑み、夢と現実の狭間で葛藤する主人公の姿を通して、平和の大切さを訴えかけています。時代を超えて語り継がれるべきメッセージが込められた本作は、改めて鑑賞する価値のある作品と言えるでしょう。