三菱商事、洋上風力発電事業で巨額減損計上、事業の先行きに暗雲

三菱商事が、秋田県沖と千葉県銚子市沖で計画していた洋上風力発電事業で、522億円の巨額減損損失を計上しました。これは、世界的な物価高騰や円安による資材価格の上昇が主な原因です。特に千葉県沖の事業は、2024年1月の着工予定が延期されるなど、今後の見通しに大きな影響が出ています。

資材高騰で事業計画に狂い

三菱商事は2021年に政府の公募で洋上風力発電事業を落札し、1キロワット時あたり11.99~16.49円という低価格での売電計画を提示していました。しかし、その後の急激な資材価格の高騰により、当初の事業計画の見直しを余儀なくされました。

三菱商事の洋上風力発電計画の風車三菱商事の洋上風力発電計画の風車

今回の減損計上は、この価格上昇による事業採算性の悪化を反映したものです。三菱商事と共同で事業を進める中部電力も、179億円の減損損失を計上しています。エネルギー専門家の田中一郎氏(仮名)は、「世界的なインフレとサプライチェーンの混乱が、再生可能エネルギー事業にも大きな影を落としている」と指摘しています。

事業の行方は不透明

2024年2月に行われた決算記者会見で、三菱商事の中西勝也社長は、「地政学リスクやインフレの影響を改めて精査し、事業計画をゼロベースで見直す必要がある」と述べました。着工や運転開始の時期については、「現時点では未定」と明言を避け、事業の先行きは不透明な状況です。

三菱商事の中西勝也社長三菱商事の中西勝也社長

再生可能エネルギー拡大への課題

日本は四方を海に囲まれており、洋上風力発電は再生可能エネルギーの主力電源として大きな期待が寄せられています。しかし、世界的に資材価格の高騰やサプライチェーンの混乱が続いており、欧米では洋上風力発電事業の縮小や撤退が相次いでいます。

政府の支援策に期待

経済産業省は、こうした事態を受けて、2025年度以降に新たな制度を導入する予定です。この制度では、入札後に資材価格などが上昇した場合、売電価格に一部を転嫁できる仕組みが設けられます。再生可能エネルギーコンサルタントの佐藤美香氏(仮名)は、「政府の支援策は、事業者のリスクを軽減し、洋上風力発電の普及を促進するために不可欠だ」と述べています。日本における洋上風力発電の未来は、政府の支援策と企業の対応にかかっていると言えるでしょう。