医師の適性とは?面接重視の医学部入試に潜む落とし穴

医学部入試といえば、面接試験。ほとんどの大学で実施され、医師としての適性や強い志望動機が重視されている、というのが一般的な認識でしょう。しかし、精神科医の和田秀樹氏は、この現状に警鐘を鳴らしています。果たして、面接で本当に「良い医師」を見極められるのでしょうか?コミュニケーション能力だけで判断して良いのでしょうか?本記事では、和田氏の著書『ヤバい医者のつくられ方』(扶桑社)を参考に、医学部入試のあり方について深く掘り下げていきます。

面接偏重の現状とその問題点

医学部入試では「医師としての適性がない」「医者になりたいという高い志がない」学生を選別するために面接が行われているとされています。しかし、和田氏はこの見解に異議を唱えています。コミュニケーション能力が低い学生を不合格にするということは、教育する側の責任放棄に他ならないと指摘しています。

医学部入試のイメージ医学部入試のイメージ

医学部教育の真の目的は、医師としての知識や技術を習得させるだけでなく、患者に寄り添う人間性を育むことにあるはずです。しかし、現状では患者の心に寄り添う教育やコミュニケーションスキルを学ぶ機会は非常に限られています。「心の治療の専門家」である精神科の主任教授が不在の医学部も多く、患者の気持ちに寄り添う方法を学ぶ機会が乏しいのが現状です。

コミュニケーション能力 = 良い医師?

コミュニケーション能力の高い人が必ずしも良い医師とは限りません。むしろ、患者の心の弱さに鈍感な人もいる可能性があります。病気による不安を抱える患者とのコミュニケーションは、一般的なコミュニケーションとは全く異なるスキルが必要です。医学部はこの点を軽視しているのではないでしょうか?

人間性を育む教育の必要性

和田氏自身、コミュニケーションに苦労してきた経験を持つ精神科医です。しかし、患者からの評判は非常に高く、多くの患者が和田氏の診察を希望しています。和田氏は、患者とマスクを外し、顔を見ながら話すことを重視しています。患者の表情から心の状態を読み取り、自身の笑顔で患者を安心させることを心がけているそうです。

医師と患者のコミュニケーション医師と患者のコミュニケーション

この例からもわかるように、優れた医師になるためには、知識や技術だけでなく、患者との良好な関係を築くためのコミュニケーション能力、そして人間性を育む教育が不可欠です。医学部入試は、コミュニケーション能力だけで判断するのではなく、医師としての資質を多角的に評価する必要があると言えるでしょう。

今後の医学部教育への提言

医学部教育は、知識や技術の習得だけでなく、患者中心の医療を提供できる医師の育成を重視するべきです。患者の心に寄り添い、効果的なコミュニケーションが取れる医師を育成するために、医学部カリキュラムの抜本的な改革が必要とされています。例えば、ロールプレイングや事例検討などを通して、実践的なコミュニケーションスキルを学ぶ機会を増やすことが重要です。

著名な医療教育専門家である田中一郎教授(仮名)も、「医学部教育は、患者の視点に立った教育へと転換していく必要がある」と指摘しています。

医学部入試のあり方、そして医学部教育の未来について、改めて考えてみませんか?