神奈川県真鶴町で、水道料金の値上げが検討され、住民の間で波紋が広がっています。1年ほど前の町長選で「水道料金値下げ」を公約に掲げて当選した小林伸行町長が、一転して値上げの必要性を訴えているのです。公約との矛盾に、住民からは戸惑いや不満の声が上がっています。
水道料金値上げの背景:老朽化した水道管と漏水問題
真鶴町は人口約6500人の小さな町。大きな河川がなく水資源に乏しいため、隣接する自治体から生活用水を高額で購入しています。さらに、老朽化した水道管による漏水も深刻な問題となっています。神奈川県内の水道管の耐震化率は70%を超えているのに対し、真鶴町はわずか2%。毎月1~2件の漏水が発生し、年間17件にも及ぶ異常事態となっています。
老朽化した水道管
水道管の更新には多額の費用が必要となるため、小林町長は苦渋の決断として値上げに踏み切らざるを得ないと説明しています。水道料金改定案では、基本料金は引き下げる一方、使用量に応じた従量料金を引き上げることで、全体として約2割の値上げとなる見込みです。
住民の声:家計への負担増に不安
水道料金は既に近隣自治体の倍近くと高く、値上げによって家計への負担がさらに増えることに、住民からは不安の声が上がっています。4人の子供を持つ鮮魚店スタッフの女性は、「真鶴町では電気代よりも水道代が高い。電気代は1万1000円なのに、水道代は1万4000円もかかる」と現状を訴えています。
飲食店の店主も、「20%の値上げは大きい。夏場は2万円を超えることもある。値上げ分を吸収するのは難しい」と頭を抱えています。水道料金の値上げは、住民生活に大きな影響を与えることが懸念されています。
公約と現実のジレンマ:町長の苦悩
小林町長は、「水道料金値下げ」を公約に掲げて当選しただけに、値上げへの決断は苦渋の選択だったと語っています。「見通しが甘かったと言われれば言い訳のしようがない」としながらも、老朽化した水道管の更新と安定した水道の供給のためには、値上げは避けられないと説明しています。
「水量を使わない単身の高齢者などは値下げになるように配慮した」としながらも、7割以上の住民に値上げを強いることになることへの心苦しさも吐露しています。
今後の見通し:議会での議論と住民理解が課題
当初、2月に議会に料金改定案を提出する予定でしたが、町長は19日に提出の延期を表明しました。「賛否が大きく分かれる改定案を拙速に提出するのは適切ではない」と判断し、さらなる議論の必要性を訴えています。
水道料金値上げという難しい問題に直面した真鶴町。町長は「公約を守っていくための努力はこれからも続ける」としていますが、住民理解を得ながら、どのようにこの課題を乗り越えていくのか、今後の動向が注目されます。