【ワシントン=田中宏幸、北京=照沼亮介】米国のトランプ政権は9日午前0時1分(日本時間午後1時1分)、「相互関税」の第2弾を発動した。関税率は日本が計24%。中国は84%で、発動済みの20%と合わせて累計104%になる。中国政府は9日、米国への報復関税を34%から84%に引き上げると発表。貿易摩擦の激化により、世界経済に深刻な打撃をもたらす懸念が一段と強まっている。
米政権は5日に発動した相互関税の第1弾で、カナダやメキシコなどを除くほぼ全ての国・地域からの輸入品に一律10%の関税を課していた。第2弾は、米国にとって貿易赤字額が多い約60か国・地域からの輸入品に税率を上乗せするもので、今回で相互関税は全面適用となった。
トランプ政権は米国が抱える貿易赤字を減らし、製造業の能力強化や国内回帰を促す狙い。すでに追加関税を課している鉄鋼・アルミニウム製品や自動車は相互関税の対象外で、銅や医薬品、半導体も同様の扱いとなっている。
第2弾で設定した税率について、米政権は貿易赤字の大きさや非関税障壁などを考慮し独自に算出したとしている。主な国・地域の税率は欧州連合(EU)20%、韓国25%、台湾32%、ベトナム46%など。中国については、トランプ大統領が8日、税率を34%から84%に引き上げる大統領令に署名した。
これに対し、中国は米国からの全ての輸入品を対象に、同率の報復関税を10日に発動する。中国は、米国が当初発表した34%の相互関税に50%の追加関税を上乗せするとした対応に強く反発。「米国の追加関税は過ちに過ちを重ね、中国の権益を侵害し、ルールに基づく多国間貿易体制を深刻に損なう」と批判した。
今後、各国と米国との間で、税率の引き下げや、適用除外を求める交渉の動きが活発化しそうだ。ホワイトハウスのキャロライン・レビット大統領報道官は8日の記者会見で「70か国近くがすでに大統領に接触し、交渉を始めている。大統領は最善の提案を示せば耳を傾ける」と述べた。