安定した職業と十分な退職金があっても、計画を誤れば老後破綻は誰にでも起こりうる現実となります。それは、安定した職業として広く認識されている立場であっても、老後の資金不足とは無縁ではありません。今回は、元国家公務員の60代夫婦を事例に、老後破綻を防ぐための対策について南真理FPが解説します。
国家公務員夫婦が定年退職、安泰な老後を確信
長年、国家公務員として勤めてきた木村さん夫婦は、61歳になり、ほぼ同時に定年退職を迎えました。 現役時代には、夫・幸一さん(仮名)は中央省庁の技術系職員、妻・小百合さん(仮名)も同じく中央省庁の事務職員として、それぞれの職務に尽力してきました。
木村さん夫婦には2人の子どもがおり、子育て中は仕事と育児の両立に追われる日々もありましたが、周囲の支えもあって、子どもたちは立派に成長。すでに大学を卒業し、それぞれ独立して家庭を築いています。
夫婦ともに真面目にコツコツ働き続けてきた結果、退職時には幸一さんが2,000万円、小百合さんが1,500万円の退職金を受け取り、さらに2,000万円の貯金もありました。
退職後まもなく、木村さん夫婦は住宅ローンの繰上げ返済に1,800万円を充てました。これほど借入残高が残っていたのは、子ども2人が独立したあとに、都内の分譲マンションを購入したためです。購入を決めた当時、定年が近いことは承知していましたが、「退職金と貯蓄で十分返済できるだろう」と軽く考えており、ローンを組むことにあまり抵抗はなかったといいます。
その後、念願だった夫婦2人での1ヵ月間のヨーロッパ旅行にも出かけました。ビジネスクラスを利用し、現地ではオプショナルツアーやショッピングも楽しむなど、贅沢な旅行となり200万円を費やしました。
年金受給までの期間は、貯蓄を取り崩しながら、旅行や外食を楽しみ、夫婦2人で穏やかに人生の第二章を満喫する。そんな未来を信じて疑うことはありませんでした。