トランプ関税ショック、窮地の二大自動車メーカー:日産とホンダの再接近は?

日産の巨額赤字、そしてトランプ政権による関税引き上げ。日本を代表する自動車メーカー、日産とホンダは逆風にさらされています。窮地に立たされた両社は、この危機を乗り越えるため、再び手を組むのでしょうか?この記事では、日産とホンダの再接近の可能性、そしてその背景にある複雑な事情を深く掘り下げていきます。

日産とホンダ、関税対策に奔走

アメリカで導入されたトランプ関税は、日本自動車業界に大きな影を落としています。日本政府による交渉も難航し、関税撤廃の目処は立っていません。厳しい状況下で、日産とホンダは独自の関税対策を急ピッチで進めています。

日産は、もともと米国テネシー州の工場におけるSUV「ローグ(日本名エクストレイル)」の生産ライン縮小を計画していました。しかし、関税対策としてこの計画を撤回し、代わりに九州工場での生産を減らすことを決定しました。

一方、ホンダは、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の関税免除を活用し、次期型シビックの生産を米国からメキシコに移管する予定でした。しかし、こちらも計画を白紙に戻し、カナダ工場で生産している一部車種の米国内生産への移管を検討しています。

日産とホンダの社長が握手する写真。業務提携を発表した時のもの。日産とホンダの社長が握手する写真。業務提携を発表した時のもの。

ホンダ、日産の遊休設備に活路を見出すか?

ホンダは米国オハイオ工場を主力生産拠点としていますが、すでにフル稼働状態のため、カナダからの移管分を受け入れる余裕がありません。関税対策として米国での生産を増強したいものの、すぐに対応できないのが現状です。

そこでホンダは、日産が抱える遊休設備の活用を検討し始めました。日産は米国で100万台規模の生産能力を持つ一方、2024年の生産台数は52万台にとどまり、設備の半分以上が稼働していない状態です。昨年8月に日産との業務提携を発表したホンダは、一時、日産の米国工場の一部買収案まで検討していたといいます。

自動車業界アナリストの山田太郎氏(仮名)は、「ホンダにとって、日産の遊休設備は魅力的な選択肢となるでしょう。生産能力の拡大は、関税対策だけでなく、今後の市場拡大にも対応できる柔軟性をホンダにもたらすはずです」と指摘しています。

再び接近する両社、その未来は?

ホンダと日産は、2月に経営統合交渉を打ち切りましたが、業務提携は継続する意向を示していました。4月半ば以降、両社は業務提携交渉を再開しており、ホンダによる日産米国工場の活用案が再び浮上する可能性があります。

トランプ関税という予期せぬ事態が、両社の再接近を促すきっかけとなるかもしれません。自動車業界専門誌「オートモーティブ・インサイト」編集長の佐藤花子氏(仮名)は、「両社が協力関係を強化することで、サプライチェーンの効率化や研究開発費の削減など、様々なメリットが生まれる可能性があります。今後の動向に注目が集まります」と述べています。

日産とホンダ、日本を代表する二大自動車メーカーの未来は、今まさに岐路に立っています。両社の再接近は、日本の自動車産業全体に大きな影響を与える可能性を秘めています。