「そりゃ普及するわ…」JR西日本のICOCAが急拡大、PASMOと明暗分かれた納得のワケ


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● PASMO停滞の一方で 急拡大するICOCA

 今や鉄道、バス利用に欠かせないICカード乗車券。とはいえ、導入エリアは大都市が中心で、地方に目を向ければ未導入の路線は珍しくないが、2021年以降、西日本の中小規模の地域鉄道・バス事業者がJR西日本のICカードICOCAを相次いで導入している。

 直近では、広島県の中国バスと鞆鉄道、岡山県の井笠バスカンパニーが3月30日から、和歌山県の明光バスが4日から、また、地方都市の中規模鉄道事業者である愛媛県の伊予鉄グループや、福井県のえちぜん鉄道、福井鉄道も、3月から全線で全国交通系ICカードに対応。導入事業者は今年3月時点で50社を超えるのである。

 では、東日本で同様の動きがあるかというと、関東には民営鉄道・バス事業者が共同で導入したPASMOがあるが、直近5年で新たに導入したのは秩父鉄道、バス事業者の東洋バス、イーグルバス、関越交通サービスなどわずかである。

 中小事業者を巻き込んだPASMOが停滞する一方、JR西日本が開発したICOCAはなぜ急速に普及しているのか。その謎を探るべく、JR西日本デジタルソリューション本部WESTER-X事業部の酒井信弘課長に話を聞いた。

 以降は北海道、九州、東北、北陸にICカード乗車券が登場し、2013年に主要10カードを中心とする「全国IC相互利用サービス」が始まったが、導入には一定のコストがかかるため地方への普及は足踏みした。

● 「簡易型IC端末」の 提供により導入が加速

 そこに目を付けたのがJR西日本だ。同社はコロナ禍を受けて2020年10月に「JR西日本グループデジタル戦略」を策定し、11月にデジタルソリューション本部を設立。鉄道事業の構造改革(DX)と社外へのソリューション販売を一体的に進めるオープンイノベーションの取り組みに着手した。その成果は当連載でもたびたび取り上げてきた通りだ。

 デジタル戦略の柱のひとつが、クレジットカード「J-WESTカード」、「モバイルICOCA」、「Wesmo!」をWESTERポイントで結びつける「WESTERワールド」の構築だ。その第一歩がICOCAユーザーの拡大になる。

 ICOCA利用可能エリアは近畿圏から郊外に拡大していったが、2019年以降は設置コストの少ない「車載型IC改札機」型を境線、和歌山線、七尾線などローカル線区への導入に着手した。

 そして、2021年に地域鉄道・バス事業者へのICOCAシステム販売を開始。2022年にコストの少ない「簡易型IC端末」の提供を始めたことで導入が加速した。「簡易型」とは端末を指す言葉であるが、便宜上、地域鉄道・バス事業者向けのものを「簡易型ICOCA」と記したい。

 JR西日本のICOCAサービスはいくつかのタイプがあるが、基本的にはいずれも同じ仕組みだ。Suicaに代表される全国共通ICカード乗車券システムは、ICカードFelicaを中心に構成される。運賃はカードに記録された乗車駅(バス停)情報とリーダ・ライタ端末に内蔵された運賃テーブルから計算し、カードに新しい残高情報を書き換える。



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