気温の上昇とともに、ペットボトル飲料の需要が高まる季節がやってきた。コンビニに行けば安価なPB(プライベートブランド)を始め選択肢があふれる中、火花を散らしているのが緑茶飲料だ。定番商品である緑茶は味や品質の違いが見えにくくなっており、各社はリニューアルや新商品の開発を通じてしのぎを削る。
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中でも最近のトレンドは「すっきり感」や「飲みやすさ」。緑茶も「お茶らしさ」の追求ではなく、長引く暑さで高まる「止渇ニーズ」に応えるリニューアルを打ち出した商品が支持を集めている。
綾鷹と生茶、リニューアルで存在感
この1年、緑茶飲料で大きく伸びたのが日本コカ・コーラの「綾鷹」とキリンビバレッジの「生茶」だ。いずれも味やパッケージなど多面的な刷新を行い、販売実績を伸ばした。
市場トップは伊藤園(2024年4月期決算時点でシェア36%)で、首位の座に揺らぎはない。一方で、2位・3位を争ってきた綾鷹と伊右衛門の間では、2024年に入って明暗が分かれた。4位の生茶は依然として上位2社には及ばないものの、販売数量を大きく伸ばし、勢いを見せている。
「綾鷹」は販売が過去最多に
綾鷹は容量を525mlから650mlに増量しながらも、価格は据え置き。「旨みがありつつも軽やか」という方向性に味を見直し、パッケージも白~明るい緑色のグラデーションへ変更して軽やかさを表現した。
リニューアルに踏み切ったのは、販売が落ち込んでいたため。同社マーケティング本部の助川公太氏は、
「評価する声もある一方、綾鷹は他社商品に比べると渋みや苦味、旨味といった味わいが濃いので“おいしいけれど飲みやすくはない”という声もあった」
と明かす。過去5年の消費者層を比較すると、苦みや渋みなどの味覚を敬遠する20~30代の顧客が離れていることが分かった。
容量面の課題もあった。ペットボトル飲料は2020年ごろから容量が増え始め、今では600ml前後が標準だ。こうした中、525mlのままだった綾鷹はその割高感も敬遠される要因だと分析した。そこで「濃いお茶」から喉の渇きを癒す「止渇ニーズ」を満たす商品へと転換を図り、結果的に2024年の販売数は過去最多を記録した。