アメ車は赤いリヤウインカーがトレードマーク
ここ最近はアメリカのトランプ政権との貿易交渉が話題となっている。アメリカに輸入されるすべての車両に一律25%の関税が課されているのは、みなさんもニュースなどでご承知のことと存ずる。
【画像】アメリカ映画に登場するクルマの車種選定は「こだわりの塊」だった
ドナルド・トランプ大統領は、日本は輸入されるアメリカ車へ関税は課していないのにもかかわらず、アメリカ車が日本で販売するには不利となる非関税障壁の存在を示唆している。その一例としてアメリカではウインカーは赤くても構わないのに、日本では赤が認められず、正規輸入に際しては黄色に変更しなければならないことなどを、不満に挙げている。
じつは日本でも、かつては赤いウインカーは認められていた。たとえば1971年に登場した3代目日産セドリック(230型)では、デビュー当初のリヤウインカーは赤であった。その後、1972年の改良で黄色に変更されている。
そもそも世界を見渡しても、赤のウインカーが広い範囲でOKというのは、いまどきではアメリカぐらいとなっている。そのアメリカにおいて、アメリカンブランドでも一時黄色のウインカー採用が広がったのだが、再び赤が目立つようになり、いまではアメリカンブランド車以外でも広く赤のウインカーを採用するようになった。日本でも人気の高いトヨタ・カローラクロスはアメリカでも販売されているが、リヤアウインカーは赤くなっている。
ユニークなところでは、アウディの北米仕様車種の一部では、リヤでは赤くピカピカと独立して光るだけではなく、さらに赤くシーケンシャル状にウインカーが点灯するようになっている。輝度が足りないので補っているのではないかという話もあるが、なぜそうなっているのかは不明だ。
USフリークには赤いウインカーが人気
世界的にウインカーが黄色になった背景には、赤ではわかりにくいというのがあったようだ。しかも、いまはLEDが当たり前となっているが、バルブ球のころは、とくにアメリカ車だと一方が断線していることが多かった。
しかも、テールランプ、ブレーキランプ、ウインカーが一体になっていることがアメリカ車では多かったので、赤いウインカーだと、後ろから見ていると赤く点灯してもブレーキを踏んだのかウインカーなのか識別ができないことも多かったので、わかりにくかったのだ。
しかし、筆者個人としては、赤く点滅したりすること自体がわかりにくいという印象は受けていない。とくに夜間はいまどきLEDなのでギラギラと赤く点灯したりするので、かえって目立ち度は抜群だと、アメリカでクルマを運転していて感じている。
アメリカからアメリカ車を並行輸入する場合は、赤いウインカーのまま一旦輸入し、汎用ランプを装着して改造し、黄色のウインカーにして通関手続きをとるのが一般的と聞いている。昔はその改造のためのランプをテープでボディに貼って通関させ、その後黄色のランプをはずして、日本国内では違法状態なのだが、赤のウインカーのまま乗っていた……というアメリカ大好きフリークもいたと聞いているが、いまではかなり厳格化されており、同じことをするのは難しいと聞いている。
アメリカでは日系メーカーだけではなく、韓国系、欧州系、それこそポルシェなども赤いウインカーを採用している。筆者が聞いたところでは、車両窃盗対策もあるのではないかとのことであった。アメリカ国内で盗まれた車両はおもに中南米など広く世界へ出荷される。
そのため、窃盗団が正規の作業を経ずにウインカーを黄色に変更したりすると、いまどきのクルマではきちんと変更しないとエラーメッセージのようなものが出ることがあるようで、盗難車だとバレバレになる。つまり、盗難されてアメリカ国外へもち出された際に、違法に再販されるのを防ぐためという説もある。
いずれにしても、アメリカ大好きな筆者としては赤いウインカーのまま日本で輸入販売されるとなれば、うれしいトピックスなのだが、赤いウインカーのまま輸入したとして、アメリカ車の販売が劇的に増えるのかといえば、そんなに生やさしいものではないのもまた現実である。
小林敦志