日本テレビ「金ロー」が絶好調だ。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「特に宮﨑駿監督の作品を筆頭としたスタジオジブリの映画など良作アニメで高い視聴率を出している。先週放送の『君たちはどう生きるか』は2024年以降放映作品で視聴率2位だった。日テレ・系列局が出資した映画が同枠の4分の1を占め、再放送すればするほど儲かる」という――。
【図表】日本テレビとフジテレビ映画枠の視聴率比較(24年1月から25年5月3日まで)
先週2日金曜に放送されたスタジオジブリの映画『君たちはどう生きるか』(宮﨑駿監督、以下、君たちは)。夜9時から11時半過ぎという遅い時間で長時間の放送になったにもかかわらず、この一週間のどの夜帯ドラマより高い視聴率となった。
放送枠は日本テレビの金曜ロードショー。以前から高視聴率が出る枠だったが、テレビ離れが進み、テレビ番組全体の視聴率が低迷する中、逆にどんどん強くなっている。
何が凄いのか、視聴データを基に分析してみた。
■『君たちはどう生きるか』の強さ
物語の舞台は第2次世界大戦中の日本。火事で母を失った主人公の眞人は、父と共に東京を離れた。その疎開先で父と再婚した母の妹・夏子や周囲の人々になじめずにいたが、そんな中で人間の言葉を話す青サギと出会い、不思議な世界に入っていく……という展開だった。
実は同作品は毀誉褒貶が激しい。
「つまらない」「退屈」「意味不明」などの批判も少なくない。その一方で「さすが」「宮崎駿監督の集大成」「表現者としての孤独な苦悩が痛切」など、高く評価する声もたくさんある。
実は「金ロー」枠でジブリ作品とその他の作品と比較すると、視聴率が傑出している。
去年1月からの同枠で放映された64作品の中では、「個人視聴率」で2位(1位は『天空の城ラピュタ』)。属性別の「SNSヘビーユーザー」(1日3時間以上の利用者)に限ればダントツ1位。そして「10代」にもよく見られ、「50歳以上」でも圧倒的だった。
「個人視聴率」トップの『天空の城ラピュタ』は恒例の“バルス祭り”が続く影響もあるのか、リアルタイム視聴する人が今も多い。ところが、SNSをよく使う人では「君たちは」はそれを上回り、さらに中高年では他作品を寄せ付けなかった。
宮崎監督の長編としては『風立ちぬ』以来10年ぶりで、『千と千尋の神隠し』以来21年ぶりのアカデミー長編アニメ映画賞だったことも大きい。しかも宮崎アニメの集大成的な作品で遺言ともとれるメッセージに、長年ジブリ映画を見て来た中高年が反応した。