新幹線内で仕事を進めたいビジネスパーソン向け「S Work車両」の利用が好調だ。15日からは、3人掛け席の両端「Pシート」が値上げされ、追加料金2000円が必要となる。
【写真】「S Workシート」「S WorkPシート」を予約するには?
新幹線ではとかく車内のマナーが話題になりがちだ。JR東海には、「お互いさま」のルールや料金の違いを明確にすることで利用客の満足度を高め、トラブルの温床となることを防ぐ狙いもあるとみられる。
◇Wi―Fiの容量2倍
JR東海とJR西日本は2021年10月から、16両編成の東海道新幹線と山陽新幹線の7号車を「S Work車両」として運用。普通指定席の価格で利用できる。
無料で使えるWi―Fi(ワイファイ)は、他の車両に比べて2倍のデータ通信量を確保。ビジネスパーソン向けに▽ノートパソコンやモバイル端末を気兼ねなく使える▽ビデオ会議や携帯電話の通話は周囲に配慮すればOK――とし、タイピング音などは「お互いさま」として許容する車両をコンセプトに掲げる。
23年10月からは、3人掛け席の中央席にパーティションとドリンクホルダーを設置。他の座席よりもパーソナルスペースを広く使うことができる両端の10席を「Pシート」とし、追加料金1200円で利用できるようにした。
手元にスライドさせると傾斜するテーブルのほか、座席のリクライニング角度を従来よりも小さくして、パソコン作業の場所を確保しているのが特徴だ。
平日、のぞみ号での利用率は「S Work車両」で70%、「Pシート」だけでも80%にのぼるという。
JR東海は、追加料金について「これまでは『お試し』として、割安価格にしていた」と説明。サービスが浸透してきたことから、800円値上げして、2000円に設定したという。
◇「お子さま連れ車両」も好調
新幹線では、数時間にわたり同じ空間で、赤の他人と過ごすことになる。
交流サイト(SNS)では、食べ物のにおいや、車内での過ごし方などの「マナー論争」が盛り上がる。座席のリクライニングについても、どこまで倒すか、声を掛けるべきかなどが度々、議論になる。
背景の一つには、鉄道会社側が明文化しているルールと、利用者による暗黙のマナーが混在していることがある。
こうしたこともあり、JR東海では、大型連休中や年末年始、東京―新大阪の「のぞみ」の一部で、親子の利用を前提とする「お子さま連れ車両」を設定している。
乳幼児が泣いたり大声ではしゃいだり、大きな音でタブレットの動画を視聴したりしても「お互いさま」のコンセプトで、「親子で気兼ねなく利用できる」と好評だという。
気持ちの良い「お互いさま」の環境を構築するなど、JR東海は、利用客のニーズをくみ取りさまざまなサービスを展開していきたいとしている。【塚本紘平】