日本の受験に中国人が参戦……「SAPIXの4分の1が中国人」の光景も


※本稿は舛友雄大著「潤日(ルンリィー) 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う」(東洋経済新報社)から抜粋、再構成したものです。

日本のインター入学に向けた「中国人向けコンサルサービス」

 そのコンサルは、1対1の相談を1時間当たり788元(約1万6200円)で請け負う。また、「年間プラチナVIP」という最上級コースには、学校選び、学校参観の予約、時間無制限の相談、志願書作成の代行、保護者または子供との英語面接といったサービスが含まれ、料金は1万8000元(約37万円)。

 決して安くない金額だが、それでも中国版Instagramの「小紅書」を通じた問い合わせが尽きない。

 実は、日本に「潤」したばかりで日本語がほとんどできない郭偉氏(仮名)もこの「年間プラチナVIP」を利用した。郭氏自身がそうであるように、「潤」でやってくる面々には日本の事情に詳しくない人が数多く含まれている。みな必死なのだ。

 そのコンサルを経営する中国人女性にあるとき直撃した。ちなみに、この経営者の子供も、東京都内にある有名インターに通っている。

「上海ロックダウン以降にお客が激増し、5倍とか10倍になりました」と明かす。2023年の夏からは別の中国人ママをアシスタントとして雇ったほどの盛況ぶりだ。

日本のインターは北京の半額以下

「中国のインターと比べると学費が半分くらいです」と彼女は言う。私が見つけた小紅書に投稿されたある人気ショート動画では「日本のインターの学費は高いと思うでしょう?いや高くないんです」と紹介されていた。

 実際、International Schools Databaseの世界76の都市を対象としたインター年間費用ランキングで、北京は2位、上海は3位となっており、中央値はそれぞれ3万6243ドル(約544万円)、約3万4126ドル(約512万円)。東京は20位で1万5254ドル(約229万円)。つまり半額以下なのだ。

 いまのところ、都内の人気インターではまだ中国人の比率はそれほど上がっていない。中国人保護者の立場からすると、競争率の高い都内有名インターは「チャレンジ受験」。横浜など近隣都市のインター、もしくは東京や地方の新設校への進学が現実的なチョイスとなっている。

 アメリカン・スクール・イン・ジャパンは私の取材に、「過去10年で中国のパスポートを保有する生徒の申請者・入学者が増えました。2013〜14年度は中国のパスポートを保有する生徒で入学したのは2人でしたが、2023〜24年度は23人でした」と回答した。

 日本人が気づかぬ間に熱を帯びる中国人インター受験戦争。日本のインターの歴史を振り返ると、バブル期には多くの外国人駐在員が子息を通わせ、その後の経済停滞期には日本人生徒が多く通うようになり、近年では日本人富裕層の間でも人気が高まってきていた。

 だが今後は、また別のフェーズに突入し、中国脱出組が主要な顧客になっていくだろう。

「日本のインターへ行く中国人の数は、習近平が死ぬまでは増え続けるでしょうね」

 中国で学校法人を運営する有名な教育者と都内で立ち話をしたとき、彼女は呆れ顔でそう話していた。彼女はさらに前日に李克強が死去したことを受け、「別の人が死ぬべきだった」と吐き捨てるように言った。その語気から、別の人とは習近平国家主席のことを指すのだとすぐに理解した。



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