10月4日に自民党総裁に高市早苗氏が誕生した当初、野党の連立協議が停滞していたことから、同月15日頃には高市氏が首相に就任するという見方が報じられていました。しかし、その後の政局は予期せぬ展開を見せ、誰が次期首相となるのかが全く不透明な状況へと一変しました。特に、公明党が政治資金問題への自民党の対応に不満を表明し、10月10日に連立離脱を宣言したことが、この政治情勢の大転換点となりました。
公明党離脱から玉木氏浮上、そして維新の決断へ
公明党の連立離脱後、日本の政界では自民党と国民民主党の連立か、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党による三党連立かという二つの選択肢が主な焦点となりました。立憲民主党が野田佳彦氏ではなく国民民主党の玉木雄一郎代表が首相でも良いとの姿勢を示してからは、玉木氏が両選択肢のキーパーソンとして連日メディアを賑わせました。
政治評論家 古賀茂明氏
しかし、10月15日、情勢は大きく転換します。日本維新の会が自民党との連立協議に向けて大きく動き出したのです。維新内部での合意形成に疑問の声も上がりましたが、翌16日には両院議員総会で執行部への対応一任が決定され、自民・維新連立の現実味が一気に高まりました。
高市氏首相誕生への具体的な道筋と議席予測
自民党と日本維新の会の協議がまとまれば、高市早苗氏が首相指名選挙で当選する可能性が極めて高まります。衆議院の全465議席中、両党の支持を合わせると231議席となり、過半数まであと2議席という圧倒的な数を占めることになります。さらに、高市氏は参政党や有志・改革の会にも協力を求めており、既に有志・改革の会に所属する3名(維新から除名処分を受けて離脱した議員)が高市氏に投票すると報じられています。これにより、初回投票での過半数獲得の可能性も十分に視野に入っています。
日本維新の会が抱える連立のリスクと避けられない理由
日本維新の会がなぜこのような「賭け」に出たのかという声も聞かれます。確かに、この連立には大きなリスクが伴います。維新は「改革政党」を標榜し、特に政治資金規制においては企業・団体献金禁止の立場を取っています。これは、禁止に絶対反対の自民党とは大きな隔たりがあります。政策協議でこの問題について自民党に譲歩すれば、維新の「改革」の看板が大きく損なわれることは避けられません。特に、公明党が連立離脱の理由として自民党の政治資金改革への不誠実な対応を挙げたことを考えると、維新がこの問題で後退し、公明党よりも後ろ向きな立場であるとの烙印を押されかねないでしょう。
しかし、維新にはどうしても連立に参加しなければならない切実な理由があります。それは、党勢の著しい衰退です。全国政党を目指してきた同党ですが、設立当初の勢いは、ここ数年のスキャンダルの繰り返しによって減退しています。大阪とその一部の近畿圏を除けば、党勢は明らかに下降線にあります。一方で、参政党などの新興勢力は維新の勢いを明らかに上回っており、次の選挙で党勢を立て直せなければ、消滅への道を辿る可能性も否定できません。この危機感が、大きなリスクを冒してでも連立に踏み切った背景にあると考えられます。
結論
日本の政局は、公明党の連立離脱から日本維新の会の自民党との連立接近へと、急速な変化を遂げています。これにより、高市早苗氏が次期首相に指名される可能性が極めて高まりました。日本維新の会が連立に踏み切った背景には、政治資金規制における政策的リスクを冒してでも、党勢の衰退を食い止め、全国政党としての生き残りを図るという切実な狙いが見え隠れします。今後の政局の動向、特に政治資金改革に関する政策協議の行方が注目されます。